2017 Fiscal Year Annual Research Report
Study on cognitive science based science lessons that promote self-efficacy
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16J03041
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
原田 勇希 北海道大学, 大学院理学院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 中学校理科 / 自己効力 / 統制感 / 心的イメージ / 視空間認知 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の研究目的は,理科の自己効力が低下するリスクと関連する個人差変数,およびその変数による影響を受けやすい学習単元や学習内容を同定することであった。 昨年度,心的視覚イメージ処理に関わる個人差が中学校理科4領域に対する自己効力(統制感)に与える影響について検討した。本年度はこれらの研究成果を『日本教育工学会論文誌』に2報,『理科教育学研究』に2報論文として投稿し,審査を通過した後に採録された。同様に,昨年度中学校理科に対する動機づけを詳細に検討した結果を『理科教育学研究』に投稿し,審査を通過した後に採録された。 さらに今年度は,中学校入学直後の1年生と3年生を対象に横断的研究を行い,空間イメージ能力が理科の学業成績と統制感に与える影響を比較した。その結果,空間イメージ能力は中学校3年生の学業成績と統制感に有意な影響力を持つのに対し,入学直後の中学校1年生ではそのような影響力は確認されなかった。この結果を日本理科教育学会第67回全国大会,日本教育工学会第33回全国大会,日本教育心理学会第59回総会などでプレゼンターとして発表し,教科教育学や教育心理学を専門とする多くの研究者と議論した。 また,1年生を入学当初から追跡した縦断的研究を行い,いつから空間イメージ能力が理科の学業成績や統制感に影響するかを検討した。その結果,空間イメージ処理が強く要求され,その個人差による影響力が観察される単元・学習内容を絞り込むことに成功した。現在,得られたデータを精緻に分析し論文化を目指している。今年度までの研究によって,来年度に実施する予定である実践的研究につながる基礎的知見を導出することができたものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初は,縦断的研究によって空間イメージ能力の個人差が中学校理科の学業成績に関連するプロセスを明らかにするところまでを予定していた。実際にはそれに加えて横断的研究による学年差の検討,さらに自己効力(統制感)を含めた理科の動機づけについても詳細に検討することができ,予定していたよりも解像度の高い基礎的知見が得られた。 さらに中学校教師と連携した予備的な実践研究も実施できたことから,来年度予定している研究の地盤は固めることができたと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度までの研究によって,空間イメージ能力の個人差が理科の学業達成および統制感に影響し,その影響力は物理分野で特に顕著であることを特定した。そのため,来年度は実践的研究として低い空間イメージ能力を持つ生徒を対象とした介入研究を行い,基礎的知見の応用を目指す。それによって,中学校理科でつまずきを経験しやすい生徒に対する有効な学習指導に関する示唆を導出できると予想される。 また同時に,さらに詳細に検討する基礎的研究を行う必要もある。具体的には,来年度では低い空間イメージ能力を持つ生徒がつまずきを経験する学習内容をさらに詳しく明らかにする。それによって,どの授業回で特に注意が必要であるかを明らかにすることができると予想される。
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Research Products
(10 results)