2016 Fiscal Year Annual Research Report
繁殖形質置換の生じやすさに影響する要因:理論と実証
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16J03061
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
京極 大助 龍谷大学, 研究部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 遺伝構造 / 繁殖干渉 / タンポポ / 個体群動態 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず、セイヨウタンポポからの繁殖干渉によりカンサイタンポポが繁殖形質置換を起こしたことを示すための人工授粉実験を行った。その結果、先行研究の結果(セイヨウタンポポの花粉によるカンサイタンポポの種子生産の低下)が再現できないことが明らかとなった。タンポポ類での繁殖干渉が生じる条件を明らかにするために、2017年度も引き続き人工授粉実験を行う。 また、人工授粉実験に用いたカンサイタンポポの4集団間の遺伝構造を明らかにするために、マイクロサテライトマーカー10座を用いたジェノタイピングを行った。現在、データの解析を進めている。セイヨウタンポポ(セイヨウタンポポとカンサイタンポポの雑種を含む)の調査地点間の遺伝構造についても、予備的なジェノタイピングを行った。雑種性の判定には葉緑体上のマーカーを用いた。データの解析は2017年度に進める予定である。 繁殖干渉が個体群動態と進化動態の双方に与える影響を理論的に解析するための素地として、繁殖干渉の密度依存性を組み込んだ個体群動態モデルを構築し、当該論文を学術雑誌に投稿した。この解析では、密度依存性を組み込むことで、従来のモデルよりも広範なパターンが繁殖干渉によって引き起こされる可能性が明らかになった。また、当該論文中では実証データへのあてはめも行い、既存のモデルよりも新たなモデルのほうがデータへの当てはまりが良いことが明らかとなった。今後は、このモデルなどをベースとして、繁殖形質置換が生じやすい条件に付いて、理論的に解析を進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
タンポポ類を用いた実証実験は、先行研究の結果が再現できないなど、当初の想定とは異なる結果が得られている。そのため計画通りに研究が進んでいるとは言えないが、結果的にタンポポ類で繁殖干渉が生じる条件についての詳細な検討を加えることとなり、現在新たな知見が得られつつある。理論研究については当初の予定通りである。共同研究予定者との調整も順調に進んでおり、2017年度より本格的な解析を始める。
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Strategy for Future Research Activity |
タンポポ類での実証研究については、先行研究のデータを自身で再解析するとともに、繁殖干渉が生じる条件を明らかにすることを目的とした種々の人工授粉実験を行う。加えて、これらのデータを解釈するための基礎データとして、カンサイタンポポの繁殖生態を明らかにするための人工授粉実験を行う。とくに、カンサイタンポポの花粉とめしべの間の性的対立を明らかにすることを目的とする。さらに、これまではカンサイタンポポの集団間の遺伝的変異に注目していたが、外来種であるセイヨウタンポポの集団間の遺伝構造についても検討を加える。 理論研究については、当初の予定通り進める。具体的には、単純な集団遺伝モデルから始め、個体群動態と進化動態を組み込んだ微分方程式モデル、そして最終的に個体ベースモデルを用いて、形質の種類や遺伝基盤が進化速度、ひいては繁殖形質置換の生じやすさに与える影響について検討を加える。
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