2017 Fiscal Year Annual Research Report
5-ブロモウラシルを用いたDNA内電子移動のin vivo検知手法の確立
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16J03092
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
橋谷 文貴 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 5-Bromouracil / DNA-protein interaction / Nucleosome / Photoreaction / Subnucleosomal structure |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者が所属する研究室ではDNA鎖に5-ブロモウラシル(以下BrU)を組み込み、DNA内電子移動の検知やDNA-タンパク質相互作用の研究を行っている。BrUは電子移動によって還元されウラシルラジカルを生じるため、申請者は紫外線照射によって誘起されたDNA内電子移動をウラシルラジカルからの生成物(主にウラシル)として検知してきた。 申請者はこれまで数百bp程度のDNAで行われてきたBrUによる電子移動検知を、ゲノムDNA(以下gDNA)で行うことを試みている。これにより生体機能にかかわる重要なDNA内電子移動の検知や細胞レベルでのDNA-タンパク質相互作用の確認ができるようになると期待される。 昨年度申請者はgDNA中5'-dCBrUBrUABrU(G/C)-3'という配列が高い光感受性を示しウラシルラジカルの生成が促進されることを示唆する結果を得た。この配列をputative sequenceと仮称する。この配列はあらかじめ断片化したgDNAにおいてはウラシルラジカルを効率的に生じなかったため、gDNAの負の超らせん構造下において光感受性を示すと仮定した。同じ負の超らせん構造を示すものとしてDNAがヒストン八量体に巻き付いたヌクレオソームが挙げられる。このため申請者はputative sequenceを含んだDNAを用いてヌクレオソームを再構成し、光感受性を観察した。残念ながらヌクレオソーム中に挿入したputative sequenceは際立った光感受性は示さなかったが、一方でヌクレオソームから外れたlinker部分においては光感受性を示した。興味深いことにこの配列は直鎖状DNAにおいては全く光感受性を示さなかったが、linker部分においては高い光感受性を示しており、ヌクレオソーム構造がなんらかの影響を及ぼしていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
申請者は2年目においてウラシルラジカルを生じたDNA領域の選択的な化学修飾とこれによるDNA断片の精製手法の検討、並びに次世代シーケンサーによるgDNA中のウラシルラジカル生成部位の特定を計画していた。現時点において申請者はラジカルから生じたウラシルをuracil DNA glycosylaseによってAPサイトへと誘導し、これをaldehyde reactive probeと反応させることで選択的なビオチン化修飾に成功している。またビオチン化したDNA断片をアビジンビーズで回収し次世代シーケンサーで解析することにより構造依存的に光感受性を示すputative sequenceの発見に至った。ヌクレオソームを利用したputative sequenceの特性検討については十分に考察が進められていない部分もあるが、研究はおおむね順調に進展している。 これとは別に申請者はヌクレオソームに関連する派生研究を開始した。エピジェネティクスの観点から翻訳語修飾を受けたヒストン-DNAの複合体が注目を集める一方でsubnucleosomal particleと呼ばれる組み立て途中のヒストン-DNA複合体の研究はそれほど進んでいない。putative sequenceの特性検討の際、申請者は大腸菌を用いてヒストンタンパクの大量生成を行った。この余剰のヒストンとDNAを用いて申請者はsubnucleosomal particleの再構成を行い、これまでほとんど報告されていないH3-H4八量体とDNAの複合体の単離精製に成功した。現在この複合体について複数の特性確認実験が進行中である。 これらの成果を踏まえると申請者の現在までの進捗状況は当初の計画以上に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
申請者の第2年目までの研究においてはDNA中の塩基間における電子移動をBrUによって観察してきた。3年目において申請者はタンパク質からDNAへの電子移動の観察を目指す。TFAMはミトコンドリアDNA(以下mtDNA)の安定化に関わっているDNA結合性タンパク質である。TFAMの発現量低下とmtDNAの損傷には明らかな相関があり、これにより種々のミトコンドリア病を引き起こす。また癌細胞の生育にも関わっていることが報告されている。結晶構造解析からTFAM中のチロシンがDNAと近接しているため、申請者はここからDNAへの電子移動をBrUによって検知することを試みる。BrUを用いてTFAMからDNAへの電子移動を確認した後、この電子移動によるチミンダイマーの修復を観察する予定である。 またsubnucleosomal particleの研究において、H3-H4八量体-DNA複合体は高い熱安定性を持っていることがわかった。さらにgDNAに対する再構成実験において通常のヌクレオソームと同様の配置パターンを示しており、生体中でも存在しうることが示唆された。3年目においてはH3-H4八量体-DNA複合体の詳しい構造の確認を目指す。具体的には複数のヒストン変異体の作成を行い、これによる複合体の形成効率変化から構造の検討を行う。またこの複合体が転写に及ぼす影響を検討するためin vitro transcription assayの系を組み立てている。
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