2016 Fiscal Year Annual Research Report
エンタングルメントを起源とする準定常状態への緩和現象の解明とその普遍性の探究
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16J03140
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
上西 慧理子 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | エンタングルメント / 熱平衡化 |
Outline of Annual Research Achievements |
冷却原子系で実現可能な模型で前期熱平衡化現象の原理を実証する研究を行った。具体的には、(I)調和ポテンシャルに閉じ込められた粒子系、(II)一次元ボース気体を記述する朝永‐Luttinger模型で解析を行い、エンタングルメントを起源とする前期熱平衡化現象が生じることを示し、そのメカニズムを明らかにした。
(I)調和ポテンシャルに閉じ込められた粒子系:調和ポテンシャルに閉じ込められた相互作用する二粒子系は、厳密に計算できるシンプルな模型である。「エンタングルメントを起源とする緩和機構は、一つの部分系を見ると熱平衡化するが全系を見ると熱平衡化せずに準定常状態へ到達する」というエンタングルメントを起源とする前期熱平衡化の性質を、非局所的な一般化ギブス分布による具体的な計算を通して明白な形で示した。
(II)一次元ボース気体を記述する朝永‐Luttinger模型:エンタングルメントを起源とする前期熱平衡化がシステムサイズが大きな系でも生じることを、準定常状態における二点相関関数を一般化ギブス分布を用いた相関関数と比較することにより示した。一つの部分系を見ると二点相関関数の準定常状態は、部分系で閉じた局所的な一般化ギブス分布で記述できるが、全系を見ると部分系間にまたがる非局所的な一般化ギブス分布で記述されることを示した。また、このエンタングルメントによる前期熱平衡化が、非局所的な保存量による前期熱平衡化と等価であることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
エンタングルメントを起源とする準定常状態への緩和現象について、具体的な模型をミクロに解析することによって理解することが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は具体的なハミルトニアンから出発して緩和現象をミクロな立場から研究し、具体的な模型において準定常状態が一般化ギブス分布を用いて記述できることを示した。今後は、準定常状態を記述する普遍的統計分布の構築に向けて、平均場近似などマクロな視点からアプローチしたい。
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Research Products
(3 results)