2016 Fiscal Year Annual Research Report
ミューオニウム超微細構造の1.135 T磁場における精密測定
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16J03151
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
上野 恭裕 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | ミューオン / ミューオニウム / QED / エキゾチック原子 / 精密分光 / J-PARC |
Outline of Annual Research Achievements |
1. 1.135 T磁場中で必要不可欠である方形のマイクロ波キャビティ(共振器)の設計を有限要素法を用いた数値計算にて行った.本来当該年度中にキャビティ製作を行う予定であったが,実験全体の進度を鑑みて下記の項目(2,3,4)に注力することがより適当であると判断したため,製作自体は次年度以降にすることとした.また,1T以上の磁場を精密に測定するためのNMR(核磁気共鳴)を用いた磁場測定装置を米国アルゴンヌ国立研究所との国際共同研究によって性能評価を行い,磁場測定精度が十分であることを確認した. 2. ミューオニウム生成のための気体標的に着目し,質量分析計を用いてKr気体標的中の不純物評価を行い,不純物による信号減少の評価および不純物量抑制のための改良を行った. 3. マイクロ波装置(キャビティ・アンプ・ケーブル)の改良を行い,この装置を用いた際に予測される共鳴信号の数値計算を行い,マイクロ波装置の性能評価を行った. 4. 2,3の実績から,世界で初めてパルスミューオンビームを用いたミューオニウム超微細構造間遷移の観測を達成した.これにより,パルスビームによって初めて可能となる大統計量を用いたミューオニウム超微細構造精密測定への基礎を築いた.この観測は1.135T磁場ではなく100 nT程度の極小磁場における測定であるものの,2,3のような技術開発は1.135T磁場での測定に応用可能である.また,この内容を論文誌に発表するよう検討中である. 5. 1.135 T磁場における測定には実験エリアの制約から現在建設中の新型ビームラインが必要であるため,引き続き極小磁場下での測定と並行して1.135Tにおけるガス・RF系の開発を進めつつ,新型ビームラインが完成次第実験を始められるよう最大限努力していく.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ビームラインの建設が予定よりも遅れたため,高磁場における実験は実験エリアの制約から未だ行えていないものの,実験装置開発および極小磁場での測定を順調に進めている.世界で初めてのパルスミューオンビームを用いたミューオニウム超微細構造共鳴の観測・測定に成功した.これにはマイクロ波装置の大きな発展や装置への理解およびガス中の不純物による共鳴信号への影響の評価が大きく寄与している.これらの項目は1.135 T磁場への応用が可能であり,研究課題遂行上欠かせない知見である.また,平行して1T以上での高磁場で使用できるNMR(核磁気共鳴)を用いた磁場測定器の開発・試験を行い,研究課題遂行に十分な磁場測定精度があることを確認した.
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Strategy for Future Research Activity |
極小磁場における超微細構造の測定を進めつつ,1.135 T磁場での測定に必要なマイクロ波共振器の製作を進める.共振器の数値計算による設計は完了している.また,混合気体標的の活用に向けて,He気体中でのミューオンの振る舞いなど,基礎的なスタディを進めていく.磁場測定器の精度を更に向上させるため,測定器に用いる回路などの調整を行う.新型のビームラインが完成次第,1.135T磁場における測定ができるよう準備を進める.
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