2016 Fiscal Year Annual Research Report
新規ABI1-SnRK1シグナル伝達系を介したC/N栄養応答制御機構の解明
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16J03184
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
陸 宇 北海道大学, 大学院生命科学院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | シロイヌナズナ / 植物栄養応答 / ABI1 / SnRK1 / SPS1F / トマト / ATL31 / 14-3-3 |
Outline of Annual Research Achievements |
シロイヌナズナを材料としたリン酸化プロテオーム解析により,SnRK1.1タンパク質の酵素活性部位のリン酸化がC/Nストレス条件において低下することが分った。そこで,FLAGタグ付加SnRK1.1を発現する植物体を作成し,Phos-tag SDS-PAGEとウェスタンブロッティング法による,C/N応答性SnRK1.1リン酸化変動の詳細な解析を試みている。 一方,SnRK1標的タンパク質であるショ糖合成の鍵酵素SPS1F(Sucrose Phosphate Synthase 1F)の三ヶ所のセリン残基のリン酸化はC/Nストレス条件において有意に低下することもリン酸化プロテオーム解析から分かった。SPS1Fは14-3-3に結合することによって活性制御を受けることが報告されている。そこで,免疫沈降法でSPS1Fと14-3-3の結合を調べた結果,両者の結合がC/Nストレス条件下で低下するという結果が得られた。14-3-3はさまざまな標的タンパク質とリン酸化依存的に結合して機能を制御する因子であり,植物のC/N応答性に重要な機能を持つことが知られている。 14-3-3は,SPS以外にも植物C/N代謝系に関わる多くの酵素群ともリン酸化依存的に結合することが報告されており,植物C/N応答に重要な制御因子として知られている。植物の果実形成における14-3-3による代謝制御機構を明らかにするために,FLAGタグ付加14-3-3を発現する形質転換トマトを作製し,その果実を用いた免疫沈降-質量分析解析から14-3-3ターゲットの網羅的解析を行なった。その結果,SPSも含めて,複数の糖代謝,細胞壁合成,光合成に関わる代謝酵素群がトマト果実での14-3-3ターゲットとして同定された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
博士課程3年となった平成28年度において,私はトマトのプロテオミクスに関する3つ目の第一著者論文を発表することができた。研究実施状況にも記されているように,植物のC/N応答に関する独創的かつ精力的な研究を実施し,興味深い結果が得られている。最終年度である平成29年度には,これらの完成が大いに期待できる。また,上記の研究成果が評価されて私は,日本植物細胞分子生物学会学生奨励賞を受賞した(平成28年9月)。以上,今年度は優れた研究の進展があったと評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
C/N条件に応じたリン酸化シグナル伝達系の変動解析:Phos-tag SDS-PAGE方法でも,SnRK1.1のリン酸化が検出されたので,この実験材料を用いて,引き続きC/N応答性リン酸化の解析を発展させていく。 リン酸化プロテオームからSPS1Fの同定:14-3-3結合に応じたSPSの活性変化およびタンパク質安定性に関して,より詳細な解析を行なっている。 SnRK1および鍵因子群の変異体を用いたC/N応答解析:シロイヌナズナSnRK1機能欠損体であるsnrk1.1とsnrk1.2を単離し,バッククロスが完了した。また,SnRK1.1の過剰発現体の作製が完了した。さらに,snrk1.1とsnrk1.2のダブル欠損体は致死のため,snrk1.1植物背景でSnRK1.2のRNAiノックダウンライン作製を試み,目的株の単離に成功した。さらに,sps1fとsps2fとのダブル欠損変異体を作成中である。野生型SPS1Fとリン酸化部位変異導入型SPS1Fの二種類の過剰発現体も作成した。こちらの変異体を用い,C/N応答性実験を行う予定である。
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