2016 Fiscal Year Annual Research Report
超伝導体/ハーフメタル界面を用いたマヨラナフェルミオンの探索
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16J03208
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
藤原 弘和 岡山大学, 自然科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | ハーフメタル強磁性体 / 超伝導体 / ヘテロ接合 / 高分解能スピン分解光電子分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.ハーフメタル強磁性体CrO2上での超伝導体薄膜作製および評価 本年度はマヨラナフェルミオンを探索するための装置の建設、試料の作製・評価を行った。装置の建設としては、真空チャンバーに低速電子線回折装置および真空蒸着装置の取り付け・動作確認、試料マウント用ベースプレートの設計・作製を行った。その後、試料の作製・評価として、ハーフメタル強磁性体CrO2上にNb薄膜を室温で真空蒸着し、オージェ電子分光で試料表面の化学状態、Nb薄膜の成長様式をその場観察した。Nb蒸着量とともに変化するCrとNbのオージェ電子強度の比から、二次元的成長様式であることを明らかにした。さらに、酸素由来のシグナルがNbの蒸着量に依らないことがわかった。これは、CrO2からNbへ酸素が移動し、Nbが酸化されたことによると考えられる。 2.ハーフメタル強磁性体CrO2の熱ゆらぎによるスピン偏極率減少の起源解明 本年度はCrO2のXe放電管およびレーザースピン分解光電子分光測定を行うことで、CrO2の電子状態の温度変化を詳細に調べた。Xe放電管を用いた測定では100 Kにおいてフェルミ準位近傍で観測されることが期待されるスピン脱偏極の兆候を観測した。さらに、レーザーを用いた測定では、温度の上昇に伴い、結合エネルギーEB = 100 meVからフェルミ準位にかけて、全体的なスピン偏極率の減少を観測した。さらに、約60 Kで、スピン偏極率がフェルミ準位近傍で急激に減少する振る舞いを観測し、DMFT計算との比較から、これはハーフメタル特有の強相関効果に由来する電子状態の変化によると考えられる。本研究結果は、昇温に伴うハーフメタルの磁気抵抗の急激な減少に寄与する本質的な電子状態の変化を世界で初めて直接観測したものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.ハーフメタル強磁性体CrO2上での超伝導体薄膜作製および評価 本研究テーマはハーフメタル強磁性体(主にCrO2)上に島状の超伝導体薄膜を作製し、その薄膜のエッジに生成するマヨラナフェルミオンを観測するという研究テーマである。これまでに、超伝導体薄膜作製のための装置の建設およびCrO2薄膜上でのNb薄膜作製・評価を行った。これにより、CrO2上の膜の成長様式は二次元成長であることが膜厚依存オージェ電子分光から示唆された。さらにCrO2からNbへ酸素が移動し、NbOx薄膜が形成することがわかった。 2.ハーフメタル強磁性体CrO2の熱ゆらぎによるスピン偏極率減少の起源解明 ハーフメタル強磁性体CrO2は基底状態で伝導電子が完全にスピン偏極した電子構造を持つが、有限温度では、伝導電子のスピン偏極率に対応する磁気抵抗比が急激に減少することが知られている。本研究では、そのスピン偏極率が減少する起源を明らかにするためにCrO2に対して高分解能スピン分解光電子分光測定を行った。これにより、温度の上昇に伴って、スピン偏極したエネルギー領域全体に渡るスピン脱偏極とフェルミ準位直上の微細なスピン脱偏極を観測した。これまでなされてきた理論計算との対応から、前者はSpin-mixing効果、後者は強相関効果に由来することがわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
1.ハーフメタル強磁性体CrO2上での超伝導体薄膜作製および評価 これまでの研究で、CrO2とNbとの界面で酸素の移動が起こることがわかったため、今後の方針として、Nbの低温蒸着、PtまたはAuのバッファー層の挿入等を行うことで、CrO2とNbとの界面で酸素が移動しないよう試行錯誤を繰り返す予定である。また、NbではCrO2からの酸素の移動を制御できない場合、より安定なTa等の超伝導体を用いる予定である。CrO2上に超伝導膜を作製することができた後、走査トンネル顕微鏡によって、超伝導体膜のエッジに局在した電子状態を調べる予定である。 2.ハーフメタル強磁性体CrO2の熱ゆらぎによるスピン偏極率減少の起源解明 これまでの研究でわかったことを論文としてまとめ、学術雑誌に投稿する予定である。また、国内外の学会で本研究の成果を発表する予定である。
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[Journal Article] Ce 4f electronic states of CeO1-xFxBiS2 studied by soft x-ray photoemission spectroscopy2017
Author(s)
T. Wakita, K. Terashima, T. Hamada, H. Fujiwara, M. Minohara, M. Kobayashi, K. Horiba, H. Kumigashira, G. Kutluk, M. Nagao, S. Watauchi, I. Tanaka, S. Demura, H. Okazaki, Y. Takano, Y. Mizuguchi, O. Miura, K. Okada, Y. Muraoka, and T. Yokoya
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Journal Title
Physical Review B
Volume: 95
Pages: 085109
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Observation of a Hidden Hole-Like Band Approaching the Fermi Level in K-Doped Iron Selenide Superconductor2016
Author(s)
M. Sunagawa, K. Terashima, T. Hamada, H. Fujiwara, T. Fukura, A. Takeda, M. Tanaka, H. Takeya, Y. Takano, M. Arita, K. Shimada, H. Namatame, M. Taniguchi, K. Suzuki, H. Usui, K. Kuroki, T. Wakita, Y. Muraoka, and T. Yokoya
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Journal Title
Journal of the Physical Society of Japan
Volume: 85
Pages: 073704
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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