2017 Fiscal Year Annual Research Report
マスト細胞を標的とした次世代型プロバイオティクス開発に向けた基礎研究
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16J03241
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
笠倉 和巳 東京理科大学, 基礎工学部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | マスト細胞 / 短鎖脂肪酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
2年目の29年度は、昨年度6種類(酢酸、酪酸、イソ酪酸、プロピオン酸、吉草酸、イソ吉草酸)の中からマスト細胞の活性化を抑制する短鎖脂肪酸として見出した吉草酸に焦点を当て、その作用機序の解明を目指した。吉草酸の作用経路としてGタンパク質受容体であるGPR109Aを介してマスト細胞に作用していることを昨年度明らかにした。GPR109Aはナイアシン(ビタミンB3)の受容体として同定された分子であり、免疫細胞においてナイアシンは、GPR109Aを介してエイコサノイドや抑制性のサイトカイン産生を促進し、抗炎症作用を示すことが報告されている。そこで、まず、①ナイアシンが吉草酸と同様にマスト細胞の活性化を抑制するか、また、②吉草酸のGPR109Aを介したマスト細胞の機能抑制にはエイコサノイド産生を介した間接的な作用があるかの検討をした。 ①吉草酸よりは効果は弱かったものの、ナイアシン添加によりマスト細胞の活性化が抑制された。また、ナイアシンの経口投与により全身性アナフィラキシーによる体温低下が緩和される傾向が見られた。 ②吉草酸およびナイアシンによるマスト細胞の活性化抑制にエイコサノイド産生が関与しているかをプロスタグランジンの合成に必要なシクロオキシゲナーゼ(COX)阻害剤であるアスピリンまたはインドメタシンを用いて検証した。COX阻害剤処理により、吉草酸およびナイアシンによる抑制効果が打ち消された。さらに、全身性アナフィラキシーの系にCOX阻害剤を投与することにより吉草酸およびナイアシン投与によりみられた体温低下の抑制が解消した。 以上のことから、吉草酸はプロスタグランジン産生を介してマスト細胞の活性化を抑制していることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度、マスト細胞の活性化を抑制する短鎖脂肪酸として見出した吉草酸に着目し、詳細な解析を行った結果、その作用機序の一つとしてエイコサノイド産生を介した抑制であることをin vitro系だけではなくin vivoの系においても明らかにすることができたことから、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度の平成30年度は、昨年度までに明らかにした吉草酸によるマスト細胞の機能制御機構の詳細を解析していき学術論文にまとめる予定である。 具体的には、吉草酸によるマスト細胞の活性化を抑制にCOXの活性化を介して産生されるエイコサノイドが関与することがわかったため、そのエイコサノイドをアゴニストやアンタゴニストを用いて同定する予定である。また、エイコサノイドに加えて吉草酸処理により抑制性サイトカインであるIL-10発現が上昇する傾向があることを見出している。さらにIL-10がマスト細胞の活性化を抑制することも他の研究グループにより報告されている。そこで、吉草酸により誘導されるIL-10産生がマスト細胞の機能を制御しうるものか、また、マスト細胞由来のIL-10が様々な病態にどのように関与しているかIL-10欠損マウスおよびIL-10欠損マウス由来のBMMCをマスト細胞欠損マウスに移入し再構築したマウスを用いて解析する。
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