2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16J03266
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
中根 由太 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | 発光特性 / カチオン認識 / アニオン認識 / オルガノゲル / 双性イオン / ナノファイバー / クラウンエーテル / 二重認識 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、リチウムイオンや酢酸イオンを認識可能なアルキルアミド置換キノキサリノン誘導体に着目し、イオン認識能のさらなる多様性を付与すべく、選択的にカリウムイオンの認識が可能な[18]crown-6を縮合させた誘導体(1)を新規に合成した。分子1を用いて、カリウムイオンと酢酸イオンに加え、これら二種類のイオンを同時認識した際の会合挙動や蛍光応答および会合体が形成する分子集合体に関する検討を行った。 最初に、分子1の酢酸アニオンに対する蛍光応答を検討した。4.3等量の酢酸イオンを加える事で蛍光スペクトル強度が約50 %に消光し、分子1が酢酸アニオンに対する良好な認識能を有することが分かった。単結晶X線構造解析から、酢酸イオンとの混合によりキノキサリノン骨格のN-Hプロトンが脱離したアニオン状態の分子構造が確認された。 次に、分子1のカリウムカチオンに対する応答を検討した。1H NMRスペクトルでは1.9等量のカリウムイオンの添加により [18]crown-6部位のプロトンの化学シフト値が低磁場シフトし、分子1はカリウムイオンに対する良好な認識能を持つことが分かった。単結晶X線構造解析から、カリウムイオンとの混合により[18]crown-6にカリウムイオンが包接された錯体の分子構造が確認された。 更にアセトニトリル中で、分子1と酢酸アニオンとカリウムカチオンを同時に混合し、双性イオン状態を実現させると、発光性のオルガノゲルを形成することが分かった。ゲル中のナノ構造を評価するためにAFM観察を行った結果、ファイバーが互いに絡み合った網目構造の形成を確認した。以上のように、[18]crown-6を導入した分子1は、カチオン-アニオン認識能に加えて発光性オルガノゲルを形成することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、リチウムイオンや酢酸イオンの蛍光イオンセンシング能を持つキノキサリノン誘導体を出発点とし、さらなるイオン認識能の付加による多重機能性を実現するために、高いカリウムイオン認識能を有する[18]crown-6骨格を導入したキノキサリン誘導体を設計・合成した。この分子が、カチオン-アニオンおよびその同時認識うぃ行った際の吸収-蛍光応答性から、会合定数を定量的に導入した。カチオンを包接した状態におけるアニオンの高い認識性が、静電相互作用の付与により達成され、またその逆となるプロセスも可能であった。新規分子の設計・合成に成功し、その溶液中のイオン認識に関する基礎物性を明らかにできた点は、今年度の研究成果として高く評価できる。 さらにカチオン-アニオン認識状態の分子集合様式に関する検討を行った。種々のスペクトル滴定実験から、カリウムイオンと酢酸イオンに対する優れた認識能を見出し、双性イオン状態における分子集合体に関する検討を試みたところ、カリウムイオンと酢酸イオンの組み合わせのみで、発光性オルガノゲルが形成することを新規に見いだした。これは、他のカチオンとの組合わせでは実現不可であり、ある特定のイオン対でのみ形成可能なオルガノゲルとなり、さらに発光性ナノファイバーの作製にも成功した。以上、本研究の最終目的である発光素子の開発に関する重要な知見を得ることができた点を高く評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
双性イオン状態が形成するオルガノゲルをもとに、新規なセンシング材料の開発に取り組む。カリウムカチオンを認識し、N-Hプロトンが脱離したに双性イオン状態がオルガノゲルの形成条件である事から、N-Hプロトンに対する酸-塩過程が、ゾル-ゲル転移を引き起こすと考えられる。可逆的なゾル-ゲル転移を利用した新規なセンシング材料の開発に取り組む。クラウンエーテル部位のさらなる設計により[12]crown-4や[15]crown-5などの導入が可能となり、他のアルカリ金属イオンに対する高い親和性を実現できる。各種誘導体を設計し、カチオン-アニオンの2重センシングによるセンシング能の制御とオルガノゲルの形成に関する検討を実施する。さらに、スルフォン基を導入したESIPT型のベンゾチアゾール誘導体を新たに設計した。予備的な検討から、塩基性分子の認識により固体状態でダイナミックな分子構造の変換を伴う発光挙動の変化が生じる事を見いだしている。様々な、塩基性分子を用いた系統的な検討から、発光挙動のON-OFFに関する分子レベルの構造変化のメカニズムを解明する事で、新規な固体発光素子の実現を目指した研究を展開する。
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Research Products
(4 results)