2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16J03349
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
藤田 聖矢 鳥取大学, 工学(系)研究科(研究院), 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | ウイルス / ペプチド / 自己集合 / 光応答 / アゾベンゼン |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、ペプチドやタンパク質にフォトクロミック分子を導入し、その構造・機能の光制御が精力的に行われている。我々は、トマトブッシースタントウィルスの内部骨格モチーフであるβ-Annulus構造を形成する24残基ペプチド が、水中で30-50 nmのナノカプセル(人工ウイルスキャプシド)を形成することを明らかにしている。本研究課題では、主鎖にアゾベンゼンを導入したβ-Annulusペプチドを合成し、その光異性化による自己集合挙動の変化を目指した。 分子動力学 (MacroModel)を用いた解析により、15, 16番目のVal、Alaをアゾベンゼンに置換すればcis体からtrans体に異性化する際に、二次構造が大きく変化することが示唆された。ペプチドをFmoc固相合成する際に合成したFmoc-[3-(3-aminomethyl)phenylazo]phenylacetic acid (AMPP)を縮合させ、15, 16残基目をAMPPに置換したβ-Annulusペプチド(INHVGGTGGAIMAP-[AMPP]-VTRQLVGS)を合成した。UV-visスペクトルにより水溶液中での異性化挙動を調べたところ、UV光(325 nm)を照射するとcis体へ、可視光(425 nm)照射によりtrans体への異性化が確認された。逆相HPLCにより、UV光照射後により半分のアゾベンセンが異性化することが確認された。水溶液の動的光散乱(DLS)測定より、光照射前後で人工ウイルスキャプシドと同程度の30 nm程度の集合体が確認された。また、得られた光散乱強度と粒径分布のペプチド濃度依存性より臨界会合濃度を評価したところ、UV照射前では10 μM付近、照射後は25μM付近であると考えられる。このことから、ペプチド主鎖上のアゾベンゼンの光異性化による自己集合挙動の変化が示唆された
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、主鎖にアゾベンゼンを導入したβ-Annulusペプチドの合成・精製に成功し、そのペプチドが水中で自己集合して人工ウイルスキャプシドを形成することが示唆する結果が得られた。また、光照射によるアゾベンゼンの異性化により自己集合挙動の変化も示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
DLSにより光異性化前後で臨界会合濃度の違いが示唆されたため、今後光応答性人工ウイルスキャプシドにゲスト分子(蛍光ラベルDNAや蛍光性ナノ粒子、FITC-デキストランなど)を内包させ、光異性化によるゲスト分子の放出挙動をUV-visスペクトル、ゲル濾過クロマトグラフィー(GPC)や蛍光相関分光法(FCS)により解析する。細胞内でのゲスト分子放出挙動は、緑色蛍光タンパク質(GFP)のプラスミドDNAを人工ウイルスキャプシドへ内包させ、光照射後にGFPが発現するかどうかによって評価する。さらに、今回合成したペプチドとは異なる位置にアゾベンゼンを導入したβ-Annulusペプチドを合成し、その自己集合挙動、ゲスト分子内包挙動、光異性化による放出挙動についてもDLS, TEMなどにより解析を実施する。
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