2016 Fiscal Year Annual Research Report
光共振性能に及ぼすサブサーフェスダメージの影響解明による高Q値微小光共振器の開発
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16J03359
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
水本 由達 慶應義塾大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | 微小光共振器 / 単結晶蛍石 / 超精密加工 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では単結晶蛍石の超精密加工における加工特性解析,サブサーフェスダメージの低減ならびに除去法の開発に取り組み,従来の性能を超える微小光共振器開発を目的としている. 平成28年度は当初の計画通り,①結晶材料におけるサブサーフェスダメージの発生メカニズム解析,②非接触研磨法によるダメージ層低減法の開発,に取り組んだ. ①に関しては,(100)面を円柱の端面として蛍石の延性モード旋削加工を行ったところ,全周でクラックフリーな表面粗さSa約2nmの加工面が得られた.それに対し,サブサーフェスダメージ深さは結晶面によって,約10nm近くの差が生じた.透過型電子顕微鏡を用いて蛍石内部の転位を調べたところ,切削方向とすべり面が一致した時には転位が切削方向に沿って起きたのに対し,一致しない場合は切削方向に対して最もすべりの起きやすいすべり系が活動し,より材料内部へと転位が生じたことがわかった.また,工具のノーズ半径を小さくすることで,サブサーフェスダメージを十数nm抑制することができた.これらの結果より,同じ形状の光共振器をノーズ半径0.05mm,0.01mmの工具でそれぞれ作成したところ,共振性能が従来に比べ約4倍向上し,10の6乗オーダ中盤のQ値を切削加工のみで得た. ②に関しては,東京大学の三村秀和准教授の協力を得て,切削加工で得られた形状を崩さない非接触研磨法としてノズル型EEMを用い,機械研磨加工された蛍石平板のナノオーダの研磨を行った.最表面にて材料の転位が見られたものの,サブサーフェスダメージが数nmオーダとなり,本研磨法が切削加工に比べ材料に転位を生じさせにくい加工であることが示された.本結果を用い,直径0.5mmの延性モード切削加工を行った蛍石側面の研磨を試みたところ,表面粗さSa2nm以下の面を得られ,切削加工後に残っていた切削痕を除去することができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度に計画した課題に関しては,全て予定通り取り組み,それぞれの課題に関して期待通りの研究成果を得ることができた.特に単結晶蛍石の超精密切削加工におけるサブサーフェスダメージの生成メカニズムを解析したことは,光共振器の高性能化に繋がった.また,非接触研磨法によるサブサーフェスダメージ除去に関しても,微小蛍石の円柱側面へ微小粉末粒子を作用させることで,従来の切削加工痕を除去でき,より平滑な面を得ることができた.今後,蛍石円柱側面の切削加工面下のダメージ層評価を行い,実際の微小光共振器に対して,本研磨手法が有効であるかを調べる予定である.以上の理由から,研究は概ね順調に進んでいると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は,切削加工により生じたサブサーフェスダメージを研磨によって除去し,ダメージ層の深さ及びダメージ層の有無が共振性能に与える影響を実験的に評価する.これと並行して,平成28年度の加工特性評価より明らかとなった,最適な工具を用い,切削加工で創出可能な,あらゆる微小光共振器形状を作製し,微小光共振器形状と光の共振現象との関連性を解明する.その他,光共振器では共振現象が起きる際,光熱変換による熱膨張が共振性能を不安定にすることもわかったため,安定して排熱を行える光共振器の製造法も開発する必要があることがわかった.最終的には最適な共振器形状を有する,単結晶層のみの高性能微小光共振器の作製を試みる.
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Research Products
(6 results)