2016 Fiscal Year Annual Research Report
実空間測定を用いた磁性トポロジカル絶縁体の物性解明
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16J03476
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
安田 憲司 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | トポロジカル絶縁体 / スピントロニクス / 磁気抵抗効果 / 電流誘起磁化反転 / 量子ホール効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
[1] 磁性トポロジカル絶縁体における巨大な非線形電気伝導 分子線エピタキシー法を用い磁性/非磁性トポロジカル絶縁体積層構造Crx(Bi1-ySby)2-xTe3/(Bi1-ySby)2Te3 (CBST/BST)の作成方法を確立した。作成した積層構造に対し、面内磁場下で、DC電流により抵抗を測定したところ、電流印加方向により、抵抗値が大きく異なるダイオード効果(非相反電気伝導)を観測した。この非相反電気伝導はPt/Coなど、他の物質系のものに比べ、数桁以上大きいことが分かった。また、同様の機構で生じる非線形ホール効果(第2高調波ホール電圧)の観測にも成功した。 [2] 磁性トポロジカル絶縁体における電流誘起磁化反転と非線形ホール効果 [1]で作成した積層構造CBST/BSTにおいて、表面状態でのスピン蓄積に由来して、スピン軌道トルクによる電流パルス誘起磁化反転を実現した。必要な電流密度は~ 2.5 × 10^10 A / m^2であり、従来の通常の金属/強磁性体ヘテロ構造に比べ小さいことがわかる。これは、トポロジカル絶縁体表面での巨大なスピンホール角に由来し、トポロジカル絶縁体のスピントロニクス材料としての有用性を示した。 [3] 磁性トポロジカル絶縁体における磁壁上のカイラルエッジ状態の観測 量子異常ホール状態においては、磁壁においてチャーン数が変化することからカイラルエッジ状態の存在が理論的に予言されていたが、実験的には実証されていなかった。そこで量子異常ホール効果を実現するCr変調ドープトポロジカル絶縁体に対し、磁気力顕微鏡MFMを用いて磁区の書き込みを行い、同時に電気伝導測定を行うことで、理論的に提唱されていた磁壁でのカイラルエッジ伝導の存在を初めて明らかにした。さらに、デバイス上に様々な磁気構造を書き込むことによって、カイラルエッジ状態を用いた記録、演算素子を実証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
特別研究員は当該年度磁性トポロジカル絶縁体における磁性による電流の制御、電流による磁性の制御という観点から盛んに実験を行ってきた。まず、特別研究員は磁性/非磁性トポロジカル絶縁体積層構造において、巨大な非相反電気伝導を観測した。これは、磁化の方向によって抵抗値が変化することを意味しており、磁性による電流の制御に他ならない。また、特別研究員はホール抵抗においてもこれと同様の現象(非線形ホール効果)を見出した。さらに電流パルスを積層薄膜に印加することで、比較的低電流で電流誘起磁化反転を起こせることも明らかにした。これは、電流による磁性の制御である。最後に、磁気力顕微鏡を用いた磁区書き込みと、電気伝導測定によって、理論的に予言されていた磁壁でのカイラルエッジ状態の存在を明らかにした。特別研究員は、3本の論文執筆に加え、国内外で盛んに研究発表も行っており、期待以上の研究の進展があったといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
[2]で述べたように、磁性トポロジカル絶縁体において、電流パルスを印加することによって、電流誘起磁化反転が可能であることが明らかになった。しかし、反転率は40%程度にとどまっており、これの改善が目下の課題である。また、電流誘起磁化反転の技術を[3]で述べた磁壁におけるカイラルエッジ状態と組み合わせることによって、電気的なカイラルエッジ状態の制御が可能になると期待できる。
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Research Products
(8 results)