2016 Fiscal Year Annual Research Report
原子ラベリング・FIB-SEM融合によるSOFC燃料極の3次元イオン分布計測
Project/Area Number |
16J03479
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
長澤 剛 東京工業大学, 大学院理工学研究科(工学系), 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | 固体酸化物型燃料電池 / 空気極 / 衝突噴流 / 同位体ラベリング / 燃料極 / 反応モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
固体酸化物型燃料電池(SOFC)燃料極における反応モデルを構築し,それに基づいて一般的なNi/YSZ燃料極の反応メカニズムの考察を行った.モデルに必要な詳細反応パラメータを文献上の第一原理計算結果から参照することで,モデルにおけるフィッティングパラメータを大幅に減少させた.その結果,モデルと実験結果との比較から燃料極の有効膜厚が推定可能になった.そこでこのモデルを文献上の複数の実験結果と比較し,有効膜厚を推定したところ,異なる実験にも関わらず温度の上昇と共に有効膜厚は増加していくという一般的な傾向を示した. これに加えて,SOFC内の酸素イオンパス,反応場分布の測定を目的とし,SOFC反応のクエンチが可能な装置の構築を行った.水冷ジャケットに埋め込む形でヘリウムの衝突噴流用ノズルを発電装置に組み込み,水冷ジャケットの周りは断熱材で覆った.この構造により,ヘリウムノズル内部は室温に保ちつつ,発電自体は800℃で行うことが可能となった.また作製した装置でクエンチ試験を行ったところ,SOFCを830℃から150℃以下まで約1.5秒で冷却することに成功した.この結果は熱伝導方程式と衝突噴流における平均ヌセルト数を用いて計算される解析結果と良好な一致を示した.次に同位体酸素雰囲気下で発電したSOFCをクエンチし,質量分析を行うことでSOFC多孔質空気極断面内の同位体酸素分布を二次イオン質量分析計によって取得することに成功した.この同位体酸素分布より,酸素イオンの輸送経路や反応密度の空間分布が明確に可視化された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度はまずSOFC反応をクエンチ可能な衝突噴流システムを組み込んだ発電装置の製作,及びクエンチ性能の確認を行った.その後同位体酸素を用いた発電実験を行い,クエンチ後の多孔質空気極断面における同位体酸素分布を取得した.その結果,本手法によって酸素イオンの輸送経路や反応密度の空間分布が可視化可能であることが明らかとなった.これに並行して,SOFC燃料極における反応モデルの構築を進め,その結果モデルは複数の文献上の実験結果と良好な一致を示した. 以上のことから,計画は当初の予定以上に進行していると判断する.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は1年目に確立した酸素同位体ラベリング及びSOFC反応のクエンチ手法を用いて,温度や電流密度,酸素分圧等を変化させた様々な条件におけるSOFC空気極内の同位体酸素の分布を計測する.また,当初の目標である燃料極における同位体分布の取得に向けて,これまでの電解質支持型セルから燃料極支持型セルに変更して実験を行う.電解質を薄膜化することにより,同位体酸素の拡散を抑え,燃料極において酸素イオンパスや反応サイトにコントラストがはっきりついた分布の取得を目指す.また,この分布を理論的に考察するため,燃料極反応の格子ボルツマン法(LBM)シミュレーションを行い,多孔質燃料極内における酸素同位体の分布を計算する.そしてこれを実験結果と比較することで,三相界面が有効に機能する構造的な条件などを調査する.
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