2016 Fiscal Year Annual Research Report
非平滑および非晶質有機薄膜の構造解析を可能にする解析手法の構築
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16J03487
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
塩谷 暢貴 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | pMAIRS / 有機半導体薄膜 / 分子配向 / 非晶質 / 非平滑 / 赤外分光法 |
Outline of Annual Research Achievements |
当研究室で開発されたpMAIRS法は理論的にはすでに完成された手法であるものの,定量的に構造解析するための測定条件は経験に基づいて半定量的にしか定まっていなかった.本研究では,有機薄膜のBerreman効果に基づくバンドシフトを利用した新たな測定条件の実験的最適化法を提案し,屈折率の異なる支持体上に作られた薄膜同士を直接定量的に比較できる最適条件を導いた.また,pMAIRS法による従来の配向解析では,薄膜材料の屈折率が考慮されておらずフラーレンやフッ素化合物などの異常な屈折率の値をもつ薄膜材料に対しては,pMAIRS法による配向解析が精確に行えないという問題点もあった.そこで,従来の配向解析の式に有機薄膜の屈折率を組み込んだ新たな理論式を導出することで,この問題についても克服した.これにより,あらゆる基板材料/有機薄膜に対して,pMAIRS法を用いた定量解析が高精度で行えるようになり,実デバイスサンプルへ応用する準備が整った. さらに,pMAIRS法を用いて代表的な高分子半導体材料であるポリ(3-ヘキシルチオフェン)(P3HT)や,可溶性低分子材料として知られるポルフィリン誘導体(ZnTPP)の構造解析を行った.この結果,薄膜が非晶質/非平滑であっても,高い精度で定量解析を行うことができた.特にX線回折測定と組み合わせることで,薄膜中の分子配向と結晶多形の相関を明瞭に解析できることを示した.これにより,製膜パラメータと薄膜構造の相関の議論が容易になり,有機半導体薄膜の構造制御のメカニズムを統一的に理解する道が開けた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
pMAIRS法の測定条件の実験的最適化と有機薄膜の屈折率を考慮した分子配向解析の基礎理論の構築により,非晶質・非平滑薄膜の定量構造解析を可能にする解析手法の構築が行えた.
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Strategy for Future Research Activity |
pMAIRS法の性能を最大限引き上げることができたため,実際に使われる有機半導体デバイス材料に応用することで,普遍性のある正確な製膜モデルを導き出す.また,MAIRS理論を基にした新たな解析手法を開発し,実デバイスに多く使われるITOガラスなどの赤外光を透過しない基板上に製膜した薄膜の構造解析を可能にする反射型のMAIRS法の構築に取り組む.
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Research Products
(18 results)