2016 Fiscal Year Annual Research Report
NIMA関連キナーゼによる植物細胞の成長制御機構の解析
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16J03501
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
高谷 彰吾 岡山大学, 自然科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | 細胞伸長 / 微小管 / チューブリン / リン酸化 / NIMA関連キナーゼ / シロイヌナズナ |
Outline of Annual Research Achievements |
1 NEK6によるチューブリンリン酸化による微小管制御 私は下に示す種々の実験を行い、NEK6がチューブリンをリン酸化して微小管を脱重合させ、細胞伸長を制御することを初めて示した。現在この結果をまとめた論文を投稿中である。 (1)nek6変異体における微小管動態の解析 NEK6が微小管を脱重合させることを確かめるためにnek6変異体の微小管動態を調べ、nek6変異体では細胞膜から剥がれた微小管が脱重合しにくいことを示した。この結果はNEK6が異常な微小管を脱重合して細胞伸長の方向を調節していることを示唆した。 (2)アミノ酸置換チューブリンの作成 NEK6によるリン酸化部位をリン酸化できないアラニンに置換すると、置換しない場合に比べてチューブリンが微小管に強く組込まれることを示した。これによってNEK6によるβチューブリンのリン酸化が微小管の脱重合を促進することが示唆された。 2 NEK6の機械ストレス応答を介した器官形成制御への関与 ENS LyonのOlivier Hamant博士との共同研究で、NEK6が機械ストレス応答へ関与し器官形態を制御することを見出した。現在、追加の実験行い、成果を論文に投稿することを目指している。 (1)nek6変異体では微小管の機械ストレス応答が高まる nek6変異体の突起状の細胞では、微小管が突起に沿って配向することや、組織に加えた機械ストレスに過剰に応答することからnek6変異体では微小管の機械ストレス応答が過剰になっていることを明らかにした。 (2)NEK6は機械ストレス応答による器官形態の制御に関わる nek6変異体の芽生えは重力刺激・機械ストレスに対し過剰な屈曲を示すことから、NEK6は機械ストレス応答を適度に抑制することで、器官形態の制御に関わることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
私は現在までに、NEK6によるβチューブリンのリン酸化を介した微小管制御機構に関しての実験を進め、論文に投稿している。私は詳細な微小管動態の定量的な解析によって、nek6変異体では細胞膜から剥がれて湾曲した微小管が脱重合できずに長時間湾曲を繰り返すことを見出した。この結果は、NEK6が微小管を不安定化して湾曲した微小管を取り除くという、これまでに分かっていなかった機能を有することを示唆していた。またNEK6の分解モチーフを取り除き、安定なNEK6の過剰発現を実現することで、これまで見られなかった、NEK6の過剰発現の強い細胞伸長阻害と微小管の脱重合というはっきりとした影響を観察することができた。さらに、リン酸化部位に変異を入れたGFP-βチューブリンを植物で発現させる実験では、リン酸化されないβチューブリンが微小管に強く局在し、一方で擬似的なリン酸化状態のチューブリンは微小管には局在せず、細胞質だけに局在した。すなわち、これらの部位のリン酸化はチューブリンが微小管へ重合するのを抑制する働きがあることを示唆している。以上の結果から、NEK6によるチューブリンリン酸化が微小管を脱重合させ、細胞伸長を制御することを示すことができた。その他に、nek6変異体において張力応答が過剰となり、異常な胚軸伸長を行うことを明らかにした。nek6変異体の細胞伸長と機械ストレスのパターンを観察と数理モデルとを組み合わせて明らかにして、論文にまとめる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
NEK6によるチューブリンのリン酸化が植物細胞内で起こっていることを示すために、野生型・nek6変異体・NEK6誘導系などの植物細胞から抽出したタンパク質を用いてSDS-PAGEを行う、バンドシフト・リン酸化検出試薬(ProQdyamond)・抗リン酸化抗体など様々な方法でチューブリンのリン酸化を検出する。また、上記の植物から精製した総タンパク質を質量分析器(LC-MS/MS)で解析して、新たなNEK6のリン酸化ターゲットを探索する。昨年度の研究で、新たに、NEK6が機械ストレスを介した微小管制御に関わることが示唆された。そこで、NEK6による機械ストレスのフィードバックによる細胞伸長制御・器官成長の仕組みを明らかにする。まず、nek6変異体の細胞の形と成長過程を高解像で取得して細胞表層に加わる張力をシミュレーションし、実際の観察結果と比較し、NEK6がない場合の微小管の機械ストレス応答を定量的に示す。さらに、nek6変異体の胚軸伸長の異常が機械ストレス応答の異常によるものであることを、胚軸成長の詳細な観察と、その観察に基づく成長のシミュレーションによって示す。nek6変異体の詳細な観察は研究員本人が行い、数理モデルによるシミュレーションの一部は共同研究を行っているフランス・リヨンのOlivier Hamant博士の協力のもと行う。さらに、細胞分裂の観察から、nek6変異体ではM期開始~染色体分離までの時間が増加するという予備的なデータを得た。今後、定量的な解析を行うとともに、細胞分裂におけるNEK6の機能について検討する。
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