2016 Fiscal Year Annual Research Report
ウイルス感染現象を詳細に記述するマルチスケールモデルの開発とデータ解析理論の構築
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16J03672
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
柿添 友輔 九州大学, 理学研究院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | ウイルスダイナミクス / 数理生物 / ヒト免疫不全ウイルス / B型肝炎ウイルス / 数理モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、ウイルス複製過程を考慮した数理モデルの開発と、数理モデルを用いた実験データの解析を行った。具体的には、ヒト免疫不全ウイルス(HIV-1)の標的細胞への侵入過程を記述する数理モデルを構築し、ウイルス感染実験データを解析する事で、HIV-1が標的細胞に侵入するために必要な補助受容体の個数を推定した。推定の結果、HIV-1 は数個の補助受容体のみを使用して侵入している事が分かった。本推定結果は、HIV-1の侵入阻害薬の評価や、新規侵入阻害薬の開発に貢献できる。本成果は、イギリスのノッティンガムで開催されたヨーロッパ理論・数理生物学会(ECMTB2016)や、アメリカ合衆国のサンタフェで開催されたSystems Approaches in immunology and infectious disease等で成果発表を行った。また、数理モデルとウイルス感染実験データを組み合わせる事で、サル/ヒト免疫不全ウイルス(SHIV) の異なる株間において感染性のあるウイルスの産生効率に差がある事を定量的に明らかにした。本結果は、国際雑誌 Theoretical Biology and Medical Modelingに報告している。 さらに、B型肝炎ウイルス(HBV)の細胞内ウイルス複製過程を考慮した数理モデルの構築に挑戦し、予備試験データの解析を行っている。予備試験データの解析において、構築した数理モデルは精度良く実験データを説明できる事を確認している。来年度は引き続き、HBVのウイルス感染実験解析に取り組んでいく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度においては、ウイルス感染動態における細胞内でのウイルス複製過程を記述する数理モデリングを構築する計画であった。現段階で、ウイルスの侵入過程そして、細胞内でのウイルス複製を考慮した数理モデリングの構築に成功しており、おおむね順調に進展しているといえる。また、これらの研究成果を社会に広く発信するために、国内・国際学会での発表や、国内・国際誌に論文としてまとめる事で自身の成果を発信している。この様に、今年度は当初の計画通りに遂行しており、引き続き計画の修正・追加を考慮しながら取り組んでいく。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、当初の計画通り、B型肝炎ウイルスの細胞内ウイルス複製動態の詳細な数理モデリングに取り組み、従来まで使用されてきた細胞間のウイルス複製動態と組み合わせたマルチスケールモデリングの開発に取り組んでいく。細胞内ウイルス複製過程と、細胞間のウイルス感染動態を組み合わせる事で、感染細胞内で、ウイルス感染根治の障壁となっている物質の排除にむけた定性的・定量的な理解を押し進める事が期待される。この様なマルチスケールモデルの開発後、ウイルス感染実験データを解析することで、創薬に向けた、最適なウイルス複製過程の阻害箇所の探索を行っていく。
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Research Products
(7 results)