2017 Fiscal Year Annual Research Report
ウイルス感染現象を詳細に記述するマルチスケールモデルの開発とデータ解析理論の構築
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16J03672
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
柿添 友輔 九州大学, システム生命科学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | ウイルス感染動態 / 数理モデル / 統計解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.後天性免疫不全症候群の原因となっているヒト免疫不全ウイルス(HIV)の感染性の研究を、ウイルス感染実験と数理モデルを組み合わせる事で行なった。HIVはヒトとチンパンジーにしか感染せず、実験動物が存在しない事が研究を遂行する上での困難の1つである。ここで、サルに感染し免疫不全を引き起こすウイルス(SIV)とHIVを掛け合わせたキメラウイルスSHIVは,サル由来の細胞に感染し、さらにHIVと同等の感染動態,症状を表すと考えられている。本研究では、SHIVの中でも強い病原性を持ち、免疫不全を引き起こすSHIV-KS661と、免疫不全を引き起こさないSHIV-#64の病原性の違いが何に起因するのかを、数理モデルを用いたウイルス感染実験の解析により定量的に明らかにしようと試みた。解析の結果、SHIV-KS661はSHIV-#64に比べて、感染性を持ったウイルスを産生しやすい事が分かった。すなわち、SHIV-KS661は感染性を持ったウイルスをより多く産生するので、強い病原性を持っている事が示唆された。本研究成果は、国際誌 Theoretical Biology and Medical Modelingに掲載された。 2.B型肝炎ウイルスは世界でおよそ2億4千万人が慢性感染しており、根治に向けた効果的な薬剤が開発されていないのが現状である。根治の障壁となっているのは、感染細胞内に長期間残存している、cccDNAと呼ばれる物質だと考えられている。そこで本研究では、感染細胞内のcccDNAの複製動態の定量化、すなわちcccDNAの半減期の推定や、生成されたHBVDNAからcccDNAヘのリサイクル率などを調べた。ウイルス感染実験と数理モデルを用いた解析の結果、cccDNAの半減期はおよそ3.6日であり、cccDNAへのリサイクル率はおよそ8%である事が推定された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、当初の計画通り細胞内のウイルス複製動態の数理モデルの構築とそれを用いたウイルス感染実験のデータ解析を行なった。これらの解析は終了しており、本年度は2件の国際学会での発表、2件の国内学会での発表を行なった。そして、現在国際誌投稿に向けての準備を進めている所である。また、それらに加えてサル/ヒト免疫不全ウイルスの感染動態の定量的解析も行なっており、今年度の課題を十分遂行できていると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、細胞内ウイルス複製の中のどの複製過程を阻害すれば、効果的にウイルス感染動態を防ぐ事ができるかを探っていく。具体的にはB型肝炎ウイルスにおける治療薬開発にむけた、効果的に感染細胞内のcccDNAを減少させる事ができる阻害箇所の探索を感度分析などを実施して行なっていく。それらに加えて、化合物ライブラリーを用いて効果的にcccDNAを減少させるような化合物を数理モデルと培養細胞を用いたウイルス感染実験とを組み合わせる事で行なっていく。
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