2016 Fiscal Year Annual Research Report
新規GalNAc特異的グリコシダーゼの立体構造に基づくオリゴ糖の合成と機能性開拓
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16J03683
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 真与 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 腸内細菌 / ビフィズス菌 / 構造生物学 / 酵素学 |
Outline of Annual Research Achievements |
ビフィズス菌はヒトに有用な腸内細菌であり、難消化性糖質を利用するための様々な独自の機構や酵素を保持することが明らかとなってきた。本研究では、ビフィズス菌が利用するヒト由来の糖鎖に含まれる、N-アセチル基を有するN-アセチルガラクトサミンやN-アセチルグルコサミンの代謝に関わるビフィズス菌由来の酵素に着目し、それらのX線結晶構造解析を行い、その分子機構を明らかにしていくことを目的としている。 本年度はBifidobacterium bifidum由来α-N-アセチルガラクトサミニダーゼ(NagBb)、同種由来β-N-アセチルガラクトサミニダーゼ(SiaBb3)、そしてBifidobacterium longum由来UDP-グルコースヘキソース1-リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ(GalT)に関して、結晶化を試みた結果、NagBbの新規構造の取得とGalTの初期位相の取得に成功した。NagBbは生化学的解析も進め、近縁の酵素では類のない、基質認識に金属イオンの関わる反応機構の詳細まで明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
NagBbに関しては、 (a)阻害実験:共同研究者から提供された阻害活性を示す可能性のある化合物3種に関し、活性測定を行なった。その結果、GalNAc-DNJのみが強い阻害活性を示すことが明らかとなり、阻害定数を求めた。 (b)新たな立体構造の取得:上記の実験結果に基づき、基質フリー構造、GalNAc複合体構造に加え、阻害剤GalNAc-DNJとの複合体構造を取得した。また、基質認識に金属イオンが関与していたことが明らかとなったため、この金属イオンの活性に及ぼす影響を調べるため変異体を作成し測定を行なった。ここで作製した金属の配位に関与する4つのアミノ酸全てをアラニンに置換した4重変異体に関して結晶化を試み、立体構造を取得した。この変異体において金属イオンが消失しており、基質認識能が低下していることを確認した。 (c)金属イオンの同定:活性中心の金属イオンの同定を試みた。金属の異常散乱効果の測定と解析により、活性中心の金属がCaであると同定した。 これらの結果をまとめ論文執筆を行ない、JBC誌に投稿した。現在リバイスを行なっており、近日中に再投稿する予定である。 また、当初の計画にはなかったGalTの結晶化、初期構造決定にも成功し、この独自性の高い酵素の構造を得られたことは、非常に大きな成果であると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
NagBbに関しては、論文が受理されるよう引き続き作業を進めていきたい。 SiaBb3に関しては、現在に引き続き発現条件の検討を行い、本年中に結晶化スクリーニングまで行うことを目指す。 GalTに関しては、初期構造が決定したばかりであり、構造解析を進めていく必要があるとともに、より良い結晶化条件の検討や他のリガンド複合体条件での結晶化条件の模索を行い、より良質な回折データを得ることを目指す。また、活性中心の詳細を明らかにし、生化学的解析も並行して進めていきたい。
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