2016 Fiscal Year Annual Research Report
マイクロRNA生合成不全性神経幹細胞分化異常によるレット症候群発症機序の解明
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16J03827
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
中嶋 秀行 九州大学, 医学系学府, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | RTT / MeCP2 / 神経幹細胞 / microRNA |
Outline of Annual Research Achievements |
X染色体上のMeCP2遺伝子変異は、Rett症候群(RTT)をはじめ、自閉症、双極性障害などを含めた種々の発達障害・精神疾患への関与が示唆されている。しかしRTTは、MeCP2遺伝子変異が原因で発症することは分かっているものの、発症機序の詳細は不明である。これまで、ニューロンにおけるMeCP2の機能異常がRTT発症の原因と考えられてきたが、最近グリア細胞の機能異常がRTT病態発症の一因である可能性が示唆され始めている。我々は、MeCP2がmicroRNA(miRNA)マイクロプロセッサーであるDrosha複合体と結合し、miR-199aのプロセッシングを促進すること、miR-199aはMeCP2の下流で神経幹細胞のニューロンへの分化を促進し、アストロサイトへの分化を抑制することを発見した。そこで本研究では、MeCP2によるmiR-199 aの生合成調節の破綻及び、それに起因する神経幹細胞の分化異常がRTT病態発症の原因になり得ることを明らかにすることを目的とした。 MeCP2によるmiRNAプロセシング制御の破綻がRTT患者の細胞においても引き起こされていることを証明するため、RTT患者由来iPS細胞から誘導した神経幹細胞におけるmiR-199aの発現量を調べた。その結果、正常な神経幹細胞と比較し、RTT患者由来神経幹細ではmiR-199aの発現量が減少していることが明らかとなった。miR-199aの欠損により、RTT患者及びMeCP2欠損マウスでみられる表現型が引き起こされることをin vivoにおいても検証するため、miR-199a遺伝子のノックアウトマウスを作製した。miR-199a欠損マウスは発達障害、脳体積の減少といった、MeCP2欠損マウスと同様の表現型を示すという非常に興味深い知見を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度予定していた、RTT患者由来神経幹細胞におけるmiR-199aの発現量評価に関しては、RTT患者由来神経幹細胞でmiR-199aの発現量が減少しているという結果が得られた。またmiR-199a欠損マウスを作製し、miR-199a欠損マウスはMeCP2欠損マウスと同様の表現型を示すことが明らかとなった。これらの理由により、当研究はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、miR-199a欠損マウスの表現型の解析を引き続き行う。また、最近グリア細胞の機能異常がRTT病態発症の一因である可能性が示唆され始めている。そこで、MeCP2欠損及び、miR-199a欠損マウスからアストロサイトを単離・培養し、アストロサイト培養上清を調製、その添加が実際にニューロンの形態や機能に悪影響を与えるかどうかを検証する。
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