2016 Fiscal Year Annual Research Report
身体冷却による運動能力向上に関する中枢性機序の解明
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16J03843
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
鬼塚 純玲 広島大学, 総合科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | アイススラリー / 磁気共鳴スペクトロスコピー / 脳温 / 認知機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、暑熱環境下において持久性運動能力を向上させる運動前の身体冷却法として新たに注目されているアイススラリーの摂取について、その背景にあるメカニズムを調査することを目的とし、①常温環境下におけるアイススラリーの摂取が脳温に及ぼす影響、②暑熱環境下におけるアイススラリーの摂取が認知機能に及ぼす影響を調査する。 どちらも新規性の高い方法を用いていることから、本年度は方法論の確立に時間を要したが、①の実験においては磁気共鳴スペクトロスコピー(MRS)を用いてヒトの脳温変化を測定することが可能となった。運動生理学分野およびアイススラリーに関する研究においてMRSを用いた脳温の測定は非常に新規性が高く、同研究領域に新たな知見を提供することが期待される。現在結果の解析中であるが、アイススラリーの摂取により脳温が低下する傾向が観察されている。 2つ目の実験においても、暑熱環境下における運動と認知機能の関係を検討するうえで、これまでの研究よりも実践に近い状況を模倣できるような実験系を設定するため、本年度は課題やプロトコルの検討を中心に行った。その結果、新たな認知課題の設定を用いた予備実験において、先行研究で観察されているような暑熱下における運動時の認知機能の低下を観察することに成功した。現在上記の実験系を用いて本実験を実施している段階であり、実験の成果が得られれば、アイススラリー摂取による運動能力向上のメカニズムに関してだけでなく、暑熱下における運動時の認知機能の変化に関しても新たな知見を提供することができると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
アイススラリーの摂取が脳温に及ぼす影響に関する研究では、磁気共鳴スペクトロスコピーを用いた脳温の測定という非常に新規性の高い方法を用いたため、まずその方法論の確立に時間を要し、さらにその装置内でアイススラリーを摂取させる方法の検討にも多くの時間を要した。 一方の認知機能に関する研究においても、暑熱環境と認知機能というまだ研究段階であるテーマとアイススラリーを組み合わせるため、同様に方法論の確立に時間を要した。特に、本研究では先行研究と異なり、より実際の競技現場で起こり得る状況に近い認知機能の変化を再現することを目的に課題の設定やプロトコルの検討を行ったため、多くの予備実験を実施した。 以上のように、どちらの実験においても新規性の高い実験系を用いたため、予想以上に方法論の確立に多くの時間を要したため、当初の予定よりも進捗状況がやや遅れている。しかしながら、昨年度までに方法論の確立に成功し、今後はデータ数を増やしていく段階であるため、早急に論文を投稿し、学会等でその成果を公表していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
アイススラリーの摂取が脳温に及ぼす影響に関する実験では、アイススラリーの摂取により脳温が低下する結果が得られているが、被験者数がまだ少ないため、今年度に被験者数を追加する予定である。追加実験後、早急に論文を投稿し、学会で発表する計画である。 認知機能に及ぼす影響を検討する実験では、脳血流の変化も測定する予定であったが、機器の故障等により測定することができなかったため、今後脳血流の変化について追加で実験を行う予定である。現在行っている実験は5月末までに終了する予定であるが、当初の予定より進捗状況が遅れているため、運動パフォーマンスに及ぼす影響は次年度に持ち越し、本年度はメカニズムに関してより詳細に検討する予定である。メカニズムに関するより詳細な検討については、アイススラリーと報酬系との関連の可能性から脳波計を用いた実験を考えているが、現在行っている実験の結果次第で内容を決定する計画である。
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