2016 Fiscal Year Annual Research Report
時間・スピン分解光電子分光によるディラック電子系のスピンダイナミクスの研究
Project/Area Number |
16J03874
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
角田 一樹 広島大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
|
Keywords | スピン分解光電子分光 / 時間分解光電子分光 / ディラック電子系 / トポロジカル絶縁体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、レーザーのパルス性、単色性、偏光可変性、微小スポットなどを利用してディラック電子系のスピン・ダイナミクスを解明することを目的としている。初年度は、「レーザー励起スピン・角度分解光電子分光装置の開発」と「時間・角度分解光電子分光を用いたディラック電子系の非平衡ダイナミクスの観測」を具体的な計画事項として掲げた。 まずは極紫外(6eV)レーザーをスピン・角度分解光電子分光装置に導入し、半球型電子分析器の性能評価を行った。本装置で使用している半球型電子分析器には電子ディフレクター機能が内蔵されており、30°×20°の放出範囲の光電子を試料回転させることなく計測することができる。この機能を利用して、トポロジカル絶縁体Bi2Se3のフェルミ面をごく短時間で観測できることを確認した。次に、2台のVLEEDスピン検出器の調整・性能評価を行った。性能評価にはBi(111)単結晶を使用し、He放電管を光源とした有効シャーマン関数Seffの見積の結果、2台の検出器で共にSeff=0.25~0.30となっており、期待通りの性能を実現していることを明らかにした。 また、量子ホール効果の発現が観測され、デバイス応用への最有力候補と考えられているトポロジカル絶縁体(Sb1-xBix)2Te3に着目し、東京大学物性研究所で時間・角度分解光電子分光を行った。その結果、ディラック点をフェルミ準位近傍にチューニングした系では、400ピコ秒を超える非平衡持続時間が実現しており、ディラック点の位置とバルク絶縁性が非平衡持続時間に重要な役割を担っていることを世界に先駆けて明らかにした。更に、平成28年度の後半には、上記トポロジカル絶縁体に磁性元素をドープした系に着目し、磁性不純物による電子緩和寿命の影響について有益な知見が得られた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の主な目的は、広島大学での「レーザー励起スピン・角度分解光電子分光装置の開発」と東京大学物性研究所との共同研究を通じた「時間・角度分解光電子分光を用いたディラック電子系の非平衡ダイナミクスの観測」に設定した。この内、ディラック電子系の非平衡ダイナミクスに関しては当初の予想以上の成果が得られており、本研究成果をもとにEMN Prague meetingにて招待講演、3件の国際会議発表、4件の国内会議発表を行った。この内、Symposium on Surface Science and NanotechnologyではYoung Researcher Awardを受賞した。また、一部の研究成果については学術雑誌に論文を投稿中である。一方、広島大学における装置開発については、スピン検出能力の評価などは当初の計画通り行えたものの、レーザーの導入および半球型電子分析器のレンズパラメタ調整に難航したため、エネルギー分解能・波数分解能などの性能評価が行えていない。以上のことから、区分(2)に該当すると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度はまず半球型電子分析器の最終調整を行い、平成28年度に行うことのできなかったエネルギー分解能・波数分解能の評価を行う。また、レーザー光を光学レンズにより集光し、スポットサイズ10マイクロメートル以下の高い空間分解能をもつスピン・角度光電子分光装置の実現を目指す。装置の評価にはBiやSbなどの標準試料を用い、その後、ワイル半金属などの新奇ディラック電子系および磁性材料のスピン偏極電子状態を解明する。更に、磁性不純物がディラック電子系のキャリアダイナミクスに与える影響を明らかにするため、初年度に引き続き磁性トポロジカル絶縁体について時間・角度分解光電子分光を行う。
|
Research Products
(10 results)
-
[Journal Article] Surface Kondo effect and non-trivial metallic state of the Kondo insulator YbB122016
Author(s)
Kenta Hagiwara, Yoshiyuki Ohtsubo, Masaharu Matsunami, Shin-ichiro Ideta, Kiyohisa Tanaka, Hidetoshi Miyazaki, Julien E. Rault, Patrick Le Fevre, Francois Bertran, Amina Taleb-Ibrahimi, Ryu Yukawa, Masaki Kobayashi, Koji Horiba, Hiroshi Kumigashira, Kazuki Sumida, Taichi Okuda, Fumitoshi Iga, and Shin-ichi Kimura
-
Journal Title
Nature Communications
Volume: 7
Pages: 12690/1-7
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
-
[Presentation] 磁性トポロジカル絶縁体の超高速キャリアダイナミクス2017
Author(s)
角田一樹, 石田行章, K. A. Kokh, O. E. Tereshchenko, 辛埴, 木村昭夫
Organizer
科研費基盤研究会A (26247064) 第6回研究会 -トポロジカル相におけるバルク・エッジ対応の物理とその普遍性:固体物理から冷却原子まで-
Place of Presentation
筑波大学
Year and Date
2017-03-22 – 2017-03-23
-
-
-
-
-
-
-
-