2017 Fiscal Year Annual Research Report
住宅・土地政策の観点からの都市部空き地・空き家の発生要因とその対策
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16J03877
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鈴木 雅智 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 空き家 / 住宅市場 / 人口減少 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、住宅・土地政策の観点から都市部空き地・空き家の発生要因を分析することで、その対策の方向性を明らかにするとともに、地域の将来像を描く上での知見を得ることを目的とする。 本年度は、まず、東京近郊(埼玉県川口市)における空き家調査データを用いて、空き家所有者の個別事情の実態把握や、所有者への働きかけのあり方を分析した。接道状況・住宅規模等の物理条件が潜在的に有利であっても、長期間空き家として放置されうる場合があることを検証し、将来、自己利用を再開したり住宅市場で処分したりする可能性から、直ちには処分せず意図的に暫く空き家として放置する場合があり、処分の決断を延期している実態が明らかとなった。また、そうした所有者に対しては、一定期間に限定した公的な賃貸活用を促すことの有効性が明らかとなった。 次に、地域分類において重要となる変数の整理として、東京大都市圏郊外における、中古(売買)住宅市場の物件情報データを用いて市場動向を分析し、具体的にどのような建物特性・立地条件をもつ住宅であれば、住宅市場での活用が可能かを明らかにした。築年数・床面積等の建物特性や、交通利便性・開発形態等の立地条件が、中古戸建住宅の価格・流動性に及ぼす影響を分析し、全体として、人口・世帯数の減少地区の特徴を満たす場合には、中古戸建住宅の購入需要も低下していることが明らかになった。ただし、東京都心から30km圏内では、高齢化率の高い地域に立地する古い住宅も需要を堅持しており、近居等を通した市街地循環の可能性が明らかとなった。一方、40km以遠では、最寄り駅から遠い戸建持ち家地区等で需要が低下している。中には価格を下げ早く処分しようとする行動がみられ、住宅が負の資産となっている状況が浮き彫りとなり、こうした地域では限定的な建物需要をふまえた社会的対応の必要性が明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初想定していた研究の順序が若干前後したが、研究内容の面では一定の成果が得られたため。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、賃貸住宅市場において、地域における競争環境が家賃改定に与える影響等について分析を進めるとともに、これまでの分析間のつながりを整理することで、住宅・土地政策の役割・影響を明らかにし、地域区分のパターン、居住建物以外の土地利用が実現しうる地区の特徴を整理する予定である。また、未発表の研究成果についても論文等に取りまとめて公表する予定である。
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