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2016 Fiscal Year Annual Research Report

乳幼児期における向社会性の発達メカニズムの解明:その性質と変容プロセスに着目して

Research Project

Project/Area Number 16J03926
Research InstitutionNTT Communication Science Laboratories

Principal Investigator

鹿子木 康弘  日本電信電話株式会社NTTコミュニケーション科学基礎研究所, 協創情報研究部, 特別研究員(PD)

Project Period (FY) 2016-04-22 – 2019-03-31
Keywords乳児 / 認知発達 / 道徳 / 正義
Outline of Annual Research Achievements

本研究は,乳幼児期の向社会性の発達メカニズムを解明することを目的としている。具体的には,①乳児期初期における向社会性の生起要因やその発達メカニズムの解明と,②乳児期から幼児期にみられるその性質の変容プロセスにかかわる要因を同定することを目標としている。
研究計画1では,発達初期における向社会性の生起過程にかかわる要因の同定と,その後の発達との関連を検証することによって,その発達プロセスを解明する予定である。研究計画2では,乳児期初期の向社会性の更なる解明のため,発達初期の向社会性のメカニズムとして,互恵性が機能しているかどうかを検証する予定である。研究計画3では,研究計画1と2の知見をもとに,インターネット上で日本全国から幅広い層のデータを取得することで,乳児期から幼児期にかけて生起する向社会性の変容プロセスに関係する要因を同定し,その知見をもとに,向社会性を適切に育むための教育方法の指針の提案や教育介入ツール作成まで行う予定である。
本研究が完成されれば,学術的な意義はもとより,ヒトの向社会性,ひいてはヒトの本質に関する議論にも多くの示唆を与えることができる。また,基礎的な側面だけでなく応用的な側面での意義も視野にいれている。昨今,いじめをなくすための道徳教育について注目が集まっている。本研究で得られた成果は,こういった議論に科学的エビデンスを提示し,科学的なエビデンスに基づく教育指針の提案に結びつく可能性がある。また,教育アプリといった介入ツールを作成することで,発達科学に基づく教育方法の解決策も示したい。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

1年目の研究実施状況は,おおむね良好であり,主に研究計画1の実施を行っている。具体的には,6ヶ月児を対象に,主に2つの実験を行っている。1つ目の実験は,生起過程にかかわる要因の同定に関係する実験で,乳児の向社会性の個人差を連続指標で計測するための実験を行っている。
2つの目の実験では,自身の研究(Kanakogi, Inoue, Matsuda, Butler, Hiraki, & Myowa-Yamakoshi, 2017)を拡張する実験を行っている。自身の先行研究では,6ヶ月児が弱者を助け,強者を挫く第三者(いわゆる正義の味方)を好むことを示したが,霊長類の研究で明らかにされているpolicingという現象を考慮すると,弱者と強者の関係性は重要でなく,争いを起こしている二者の関係性を仲裁する第三者を好む可能性も考えられる。この実験ではその可能性の検証を行い,争うものを仲裁するものを好むといった生物学的な基盤があるかどうかの検証を行っている。まだ十分なサンプル数があるわけではないが,おおむね良好な結果が得られている。
更に,他大学の研究者と連携し,8ヶ月の乳児を対象に,乳児自身が課題に参加する形で,弱者を助け,強者を罰するかどうかの実験も行っている。この研究は従来の乳児研究と一線を画し,乳児自身による自発的な反応に主眼を置き,乳児が課題に参加できるところが革新的である。綿密に予備実験を行いながら,現在実験に着手し,サンプル数を増やしている。こちらの研究も,まだすべてのサンプル数を取りきっているわけではないが,おおむね良好な結果が得られている。

Strategy for Future Research Activity

研究計画1での向社会性の個人差を計測する実験では,乳児の瞳孔の拡張・収縮を従属変数としているので,実施上の困難さが浮き彫りになり,予備実験により乳児を対象として十分なデータを取得することが難しいことが明らかになっている。そのため,現在,刺激映像の提示時間を短くするなど,実験パラダイムの修正を行っている。
また,研究計画2の準備も進んでいる。この実験に使用する刺激の妥当性を確認するために,別の実験を既に行っており,その成果を国際誌に投稿している(Butler, Kanakogi, Imafuku, Myowa-Yamakoshi, under review)。実験刺激が出来上がり次第,実験を実施する予定である。
2年目ではこれらの研究を迅速に進めていき,研究計画3につなげていく予定である。また,結果が得られ次第,それらの研究成果を国内外の学会に順次発表していき,論文化を迅速に行う予定である。

  • Research Products

    (8 results)

All 2017 2016

All Journal Article (3 results) Presentation (5 results) (of which Int'l Joint Research: 1 results)

  • [Journal Article] 心に刻まれた正義―乳児は弱者の味方なのか?―2017

    • Author(s)
      鹿子木康弘・小林哲生
    • Journal Title

      電子情報通信学会技術研究報告

      Volume: 116 Pages: 151-155

  • [Journal Article] 発達早期のミラーニューロンシステム―他者の動きの意味を理解する2016

    • Author(s)
      鹿子木康弘
    • Journal Title

      発達

      Volume: 148 Pages: 53-58

  • [Journal Article] 発達においてwe-modeが担う機能及びそのメリット―平井論文へのコメント―.2016

    • Author(s)
      鹿子木康弘
    • Journal Title

      心理学評論

      Volume: 59 Pages: 270-273

  • [Presentation] 心に刻まれた正義―乳児は弱者の味方なのか?2017

    • Author(s)
      鹿子木康弘・小林哲生
    • Organizer
      ヒューマンコミュニケーション基礎研究会
    • Place of Presentation
      なみきスクウェア
    • Year and Date
      2017-01-27 – 2017-01-28
  • [Presentation] Preverbal infants affirm third party interventions aiding victims from aggressors2017

    • Author(s)
      Kanakogi, Y., Inoue, Y., Matsuda, G., Butler, D., Hiraki, K., & Myowa-Yamakoshi, M.
    • Organizer
      Budapest CEU Conference on Cognitive Development
    • Place of Presentation
      Budapest, Hungry
    • Year and Date
      2017-01-04 – 2017-01-07
    • Int'l Joint Research
  • [Presentation] 正義の肯定②:乳児は攻撃相互作用を止める他者を正義の味方として認識しているか?2016

    • Author(s)
      鹿子木康弘・井上康之・松田剛・David Butler・開一夫・明和政子
    • Organizer
      日本赤ちゃん学会第16回学術集会
    • Place of Presentation
      同志社大学
    • Year and Date
      2016-05-21 – 2016-05-22
  • [Presentation] 発達早期の向社会性の発達―“われわれ感”による再考―2016

    • Author(s)
      鹿子木康弘
    • Organizer
      日本赤ちゃん学会第16回学術集会
    • Place of Presentation
      同志社大学
    • Year and Date
      2016-05-21 – 2016-05-22
  • [Presentation] 発達早期における向社会性2016

    • Author(s)
      鹿子木康弘
    • Organizer
      日本発達心理学会第27回大会
    • Place of Presentation
      北海道大学
    • Year and Date
      2016-04-29 – 2016-05-01

URL: 

Published: 2018-01-16  

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