2016 Fiscal Year Annual Research Report
細胞外基質ラミニンの分泌と基底膜形成を担う小胞輸送機構の解明
Project/Area Number |
16J04152
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
本間 悠太 東北大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | 小胞輸送 / Rab / ラミニン |
Outline of Annual Research Achievements |
上皮細胞は、組織外環境に接する頂端面、及び他の細胞や基質に接する側底面という2つの区切られた膜領域を有しており、それぞれの面で特異的に物質を分泌・吸収することで上皮組織に必要な機能を果たしている。この頂底極性は、方向性をもった細胞内小胞輸送により物質が適切に分配されることで形成・維持される。上皮細胞の底面側には基底膜と呼ばれる特殊な細胞外基質の層が存在しており、基底膜への接着は、上皮細胞が極性を獲得し、形態形成を行うために必須である。基底膜の形成には、ラミニンを始めとする基底膜構成因子が底面側に特異的に分泌されることが必要と考えられるが、それを可能にする分子的実態はほとんど明らかになっていない。そこで本研究では、「ラミニンの分泌と基底膜の形成を制御する小胞輸送制御」という観点から、これに関わる分子を同定し詳細に解析することで、上皮細胞の極性形成・維持の分子機構の解明を目指した。 まず、上皮細胞のモデルであるMDCK細胞株を用いて、ラミニン分泌と基底膜形成の表現型を評価する系を確立した。具体的には、パーミアブルサポートを用いた頂端面・側底面への分泌アッセイや、コラーゲン包埋培養によるシスト形成時の基底膜の免疫染色等により、これを評価した。続いて、細胞内小胞輸送の主要な制御因子であるRabファミリー遺伝子の関与を明らかにするため、全Rab遺伝子の網羅的なノックアウト細胞の作製を行った。今後、このノックアウト細胞を用いて、上記の評価系を基準とした詳細なスクリーニングを行う予定である。また、既にラミニンの分泌に影響のあるRab遺伝子を一つ発見しており、スクリーニングで新たに同定されたものと共に、今後詳細な解析を行っていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初は、既に当研究室が保有しているsiRNAを用いたスクリーニングを行う予定であったが、siRNAの欠点を排除し、より確実な結果を得るため、Cas9を用いて全Rab遺伝子のノックアウト細胞を作ることとした。現在までに全41種類のノックアウト細胞の作製はほぼ完了している。詳細なスクリーニングはこれから行う予定であるが、既に、ラミニンの分泌が全くできなくなっている細胞株を一つ見出しており、今後の進展が期待できる。以上の事実から、本研究課題は当初の計画以上に進んでいると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、作成した全ノックアウト細胞を用いて詳細なスクリーニングを行う。その後、既に表現型が得られているものと合わせ、同定された候補Rab分子について、恒常活性型及び優性不活性型変異体を用いた解析や、Rab結合分子(エフェクター)、Rab活性化・不活性化因子(GEF及びGAP)などの解析を通して、詳細な機能解析を行う。さらに、Rab以外の小胞輸送制御因子(モータータンパク質、小胞繋留・融合装置SNAREなど)についても解析を進め、ラミニンの分泌に関わる分子実体の全容を明らかにすることを目指す。
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