2016 Fiscal Year Annual Research Report
Residents' human-nature relationships and a society in harmony with nature: An investigation of Sado Island's Inclusive Wealth
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16J04155
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉田 有紀 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | 包括的富 / 地域創生 / 新国富指標 / サステイナビリティ / 自然資本 / 地理情報システム(GIS) / 幸福度 / 豊かさ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の主な内容は①佐渡島の包括的富の推計、②地理情報システムによる包括的富のマッピング、③地域レベルの包括的富の推計方法の構築、そして④包括的富と経済指標の比較であった。これに対し、H28年度は、関連データの収集とそれを用いた包括的富の推計、佐渡島の現状を把握するための現地調査、そして現地住民の環境や自然資本に対する認識等の把握を目的とした質問紙調査を計画、実施した。①の推計結果は国内外の学会で発表した上、④経済指標との比較と合わせ、書籍上で発表した。現在国際学術誌への投稿に向けて執筆中である。
また、③地域レベルの包括的富の精緻化と推計結果の検証、さらにそれを形成する住民の環境や自然資本に関する認識等の把握を目的に、地理情報の収集と佐渡市全域の住民を対象としたアンケート調査を実施した。アンケート調査には、包括的富を構成する、人工・人的・自然資本のこれまでの推計に含まれないが佐渡島の資本を構成すると考えられる要素の定量化、そしてそれらの富と人間の福利との関係性を把握するための項目を設定した。また、②地理的分析にむけ、回答者の位置情報は判別可能としている。アンケートの調査結果は地理情報システム上で管理し、土地利用や人口構成などのこれまで収集した地理情報と照合する。さらに統計分析に加え、地理的差異の要因も考慮することにより、物理的環境と主観的認識の関連も検証する。
調査結果は自治体に提供し、地域の開発に利用することが期待されるだけでなく、包括的富の方法論についての学術的な議論にも寄与すると考えられる。また、上記の解析を通し、主観的な福利や豊かさの要因を解明することにより、包括的富に関する従来の方法論をさらに発展させることができる。以上から、学術論文や学会発表を通し、包括的富を始めとした、持続可能な発展の指標開発に寄与することはもちろん、社会実装を意識した研究を実施していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
①包括的富の推計については、初年度の活動により市区町村レベルでの統計データの欠如が発覚したが、佐渡島での応用に適したデータの検討と収集を実施することで、当初は想定していなかったデータも収集できた。具体的には、一般公開されている統計に加え、佐渡市内の各部署、島内の農林水産業の協同組合、市場、直売所や小売業者、そして新潟県の研究所などから取得したデータを検討し、実際に推計を行った。 推計結果は、2016年6月に米国ワシントン州で開催された、エコロジカル・エコノミックスの国際学会で口頭発表し、包括的富の推計に関する方法論について専門家との意見交換や議論を行った。さらに同年12月に行われたサステイナビリティ学グローバルリーダー養成大学院プログラム国際シンポジウムでのポスター発表を通じ、本研究の全体像について、多様な有識者からフィードバックを得た。以上を踏まえて改善した推計結果に、④往来の経済指標との比較や、③地域レベルでの推計により適した方法論の構築に向けた展望も交え、馬奈木編『新国富論:インクルーシヴな豊かさ』中央経済社、の一章として発表した。 アンケート調査では、市場を介さない農林水産物など、往来の推計には含まれない生産活動、また、ソーシャルキャピタルや幸福度など、回答者の主観を把握することを試みた。設計に際しては、既存文献に加え、現地調査(のべ32日間、12回(今年度中は14日間、6回))で得た情報も反映させた。回収率は1457通中523通(35%強)であった。 以上の研究活動を通じて、有識者との交流も重ねてきている。上述の学会に加え、本研究の対象地である佐渡島も含め、地域に根付いた食料の流通に関する日本と欧州の比較研究ワークショップ(2016年3月8~11日国連大学主催)に参加するなどした。これらの有識者との意見交換等を通じ、地域農業に関して論文を執筆し、国際学術誌に投稿した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで、主に①包括的富の推計に焦点を当ててきた。次年度はその結果の議論と再検証、そして国際学術誌への投稿をした上で、②地理的分析と③地域レベルの指標としてより適した方法論の構築に向けた、住民の主観的側面を検証する。 ②地理情報の収集は概ね完了しているが、島内の小地域、そして時系列の既存データが欠如していたため、①の包括的富の算出に利用した既存データの多くは市全域、もしくはそれ以上の地理範囲の統計データを外挿したものである。H29年度は、アンケート調査や農協から取得した小地域の農業生産に関する情報、さらには大手スーパーの顧客・販売情報(ID-POS)などを活用し、包括的富の資本構成の地理的差異をより詳細に分析する。これらの分析結果を、統計データによるこれまでの推計結果と比較することで、往来の推計方法による包括的富の検証を行う。さらに地理的差異の要因も考慮することにより、物理的環境と主観的認識の関連も検証する。 6月にスウェーデンで開催されるInternational Symposium on Society and Resource Managementでは福利についてのセッションに招待されており、本研究の研究成果を発表する予定である。当学会に別途申請した、ポスター・口頭発表も受理されている。 また、昨年中に、本研究の受け入れ機関である東京大学サステイナビリティ学連携研究機構(IR3S)と佐渡市は『自然共生社会の実現に向けた研究等に関する連携・協力』に関する協定書を結んでいる。このことにより、本研究のアンケート調査は、佐渡市の全面的な協力の下、実施した。また、佐渡住民のワークショップなど、この調印により開催されているその他の研究プロジェクトにも携わることで、研究対象地での知見を得てきている。他のプロジェクトや自治体とは今後も連携することで、社会実装と学術研究の両面に還元していく。
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Research Products
(10 results)
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[Presentation] Accounting wealth in a socio-ecological production landscape: Regional application of the Inclusive Wealth Index in Japan2016
Author(s)
Yoshida, Y., Matsuda, H., Ikeda, S., Managij, S., & Takeuchi, K.
Organizer
International Society for Ecological Economics 2016
Place of Presentation
Washington, D.C.(USA)
Year and Date
2016-06-29 – 2016-06-29
Int'l Joint Research
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[Book] Sustainability Science: Field Methods and Exercises2016
Author(s)
San Carlos, R., Tyunina, O., Yoshida, Y., Mori, A., Sioen, G., & Yang, J.
Total Pages
243 (67-91)
Publisher
Springer International Publishing
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