2016 Fiscal Year Annual Research Report
血中滞留性の向上を目指した血清アルブミンによる可逆的被覆リポソームの開発
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16J04193
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
佐藤 ひかり 九州大学, システム生命科学府, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | ドラッグデリバリーシステム / リポソーム / 血清アルブミン / 血中滞留性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、リポソームの血中滞留性の向上を目指して、生体内に豊富に存在し、血中滞留性の高い血清アルブミンによって覆われるリポソームを開発することを目的としている。具体的には血清アルブミン結合性リガンドを表面に修飾することにより、血清アルブミンと混合するだけで被覆されるリポソームを開発する。以下に平成28年度の研究から得られた成果をまとめる。 まず、リガンドとしてアルキル鎖に焦点を当て、鎖長の異なるアルキル鎖を用いてリガンド修飾リン脂質を3種合成した。次に、得られたリガンド修飾リン脂質を用いてリポソームを調製し、血清アルブミンによる被覆の実証を行った。当初予定していた手法では血清アルブミンによる被覆は観察できなかった。しかし、塩溶液中における分散安定性を調べると、2種類のリポソームについては、血清アルブミン非存在下では速やかに凝集し、血清アルブミン存在下では安定して分散することが分かった。これは、血清アルブミン非存在下では疎水性の高いリガンド同士がリポソーム間で疎水性相互作用し、架橋点となって凝集したことが考えられる。一方、血清アルブミン存在下ではリガンドが血清アルブミンと会合したため、リガンド同士の疎水性相互作用が抑制されたことが考えられる。本結果からリポソームの血清アルブミンによる被覆が示唆された。また、アルキル鎖長が最も長く、疎水性の高いリガンドを修飾したリポソームに関しては、塩溶液中でも安定して分散していたことから、リガンドがリポソーム膜内に埋没してしまう可能性があることが示唆された。次に、1種類のリガンド修飾リポソームを用いてマウスにおける血中滞留性を評価した。優れた血中滞留性は観察されなかったが、脾臓へ多く集積していることが明らかとなかった。この原因として、血中投与後、リガンドが血清アルブミン以外のタンパク質と会合し、粒径が増大したことが考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
血清アルブミンによるリポソームの被覆が示唆される結果は得られたものの、当初予定していた手法で確認できず、被覆している血清アルブミンを定量的に評価できなかった。そのため、各リガンド修飾リポソームの血清アルブミンに対する親和性を比較できていない。 一方、マウスにおける血中滞留性の評価については、当初平成28年度に行う予定だったが、前倒しして本年度行った。塩溶液中で凝集することが見出されたため、血清アルブミンと予め混合することにより凝集を抑制するという手法を確立することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では、血清アルブミン選択的に被覆されるリポソームの開発を目指す。そこで、血清アルブミン以外の血中に存在するタンパク質とリガンドの会合についても調べる予定である。また、アルキル鎖の長さと血清アルブミンに対する選択性を調べ、血中滞留性との相関を調べる予定である。
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