2016 Fiscal Year Annual Research Report
半導体-非水溶液界面を利用した高起電力光電気化学セルの研究と人工光合成系への展開
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16J04338
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
影島 洋介 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | 光電気化学 / 光電極 / レドックス反応 / 人工光合成 / エネルギーキャリア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、半導体-非水溶液界面における光電気化学反応を利用した新規な人工光合成系の構築を目的としており、水の理論電解電圧以上の高い光起電力を発電することの出来る光電気化学セルの開発を主眼としている。本年度の研究では主に、CdS光アノードを用いた光電気化学セルにおける新規レドックス種の検討、より安価で高効率化の見込める光電極の開発、水とトルエンを反応物とした光電気化学的なメチルシクロヘキサンの直接生成、について検討した。 既往の研究では主にレドックス対としてルテニウムビピリジン錯体を用いていたが、その代替として過塩素酸鉄が本光電気化学セルに適用可能であることを見出した。対流ボルタンメトリーを用いた速度論的解析や溶液の吸光度など多角的に検討することで、光電気化学セルの性能向上を達成した。 非水溶液中のレドックス反応の検討だけではなく、光電極の開発も併せて行った。単結晶CdS光アノード表面に対し、反応の活性点となる白金の導入や、電化分離を促進するp型層を用いた多層構造化によって、光電気化学セルの電流値や耐久性の向上も検討した。また、これまでの検討で用いていた比較的高価な単結晶ウエハーの代替として、より安価で高効率化を狙える系の構築を目指し、粒子転写法という手法を用いてCdS粉末から作製した光電極を本光電気化学セルへと適用した。上記の成果の一部については国際学会や英語原著論文によって報告している。 これまでに得られた半導体-非水溶液界面に関する知見を応用し、新たな人工光合成系の構築を指向して、水とトルエンを反応物とした光電気化学的なメチルシクロヘキサンの直接生成に関する検討も行った。光電気化学的にこの反応を駆動した報告例は極めて少ないが、粒子転写法によって作製した光電極を用いた反応の進行を達成しており、この成果に関しても国内外の学会や英語原著論文によって報告している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究では、非水溶液中のレドックス反応や光電極の開発など多角的に検討することで、光電気化学セルの性能向上・材料の代替に関して概ね研究計画を満足するような進捗が得られている。非水溶液中のレドックス反応に関する検討では、新規レドックス種が本光電気化学セルに適用可能であることを見出し、対流ボルタンメトリーを用いた反応の速度論的解析も行った。一方光電極の開発に関しては、電極に対する表面修飾がセルの性能に与える影響の評価や、粉末材料から作製した電極を適用することによって、より安価で高効率化を狙える系の構築に着手した。これらの成果の一部については、国外の学会や英語原著論文として報告しており、光電気化学セルの性能向上・材料の代替に関して着実に成果を挙げていると言える。 また、これまでに得られた半導体-非水溶液界面の光電気化学反応に関する知見を利用し、新たな人工光合成系の構築を指向した光電気化学セルの構築にも着手した。水を水素源としてトルエンを光電気化学的に水素化することで、有望なエネルギーキャリアの一つであるメチルシクロヘキサンの直接生成を検討した。光電気化学的にこの反応を駆動した報告例は極めて少ないが、種々の光電極を利用した反応の進行に成果を挙げており、国内外の学会や英語原著論文によって一部成果を報告している。 以上の成果から考えて、おおむね順調に研究が進展したものと評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、半導体-非水溶液界面を利用した光電気化学セルの更なる性能向上・新規人工光合成系の構築を目指し、引き続き光電極の開発を行う予定である。 これまでに、単結晶CdS光アノードに対する種々の表面修飾によって光電気化学セルの光電流値・耐久性を改善可能であることを報告している。しかし、現状では特に光電流のオンセット電位付近での逆方向暗電流も促進してしまうために、開回路電圧が最大で100 mV程度減少してしまうことも確認された。一方、より安価で高効率化を狙える系の構築を目指し、粒子転写法を用いてCdS粉末から作製した光電極を本光電気化学セルへと適用可能であることも見出してる。ただし、粒子転写法によって作製した光電極は裏面金属層の一部が電解液に接触してしまうため、光電流のオンセット電位付近において裏面金属の還元的暗電流が流れてしまい、光電圧の低下につながってしまった。そこで今後は、より適切な表面構造の検討や裏面金属の不活化による開回路電圧の減少抑制が検討課題の一つとなる。 これまでは光電極のモデルケースとしてn型材料であるCdSを用いていたが、より高効率化を狙える新規材料の開発・光電気化学セルへの適用も試みる。具体的にはよりバンドギャップが小さく高い光電流値を見込めるp型材料などを光カソードとして適用することを予定している。 また、新規人工光合成系の構築を志向した水とトルエンを反応物としたメチルシクロヘキサンの直接生成系に関しても引き続き検討を行う予定である。既往の研究では可視光を利用して外部バイアス電圧を印加しない状態での反応の進行は達成されていない。可視光応答性の光電極に対する反応活性点の構築などの方策により光電流値の向上を図り、最終的には光カソードと光アノードの組み合わせによる、疑似太陽光照射下で外部バイアス電圧を印加しない状態での反応の進行を試みる。
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Research Products
(12 results)