2017 Fiscal Year Annual Research Report
有機ケイ素還元剤による低原子価金属錯体の発生を鍵とした窒素―窒素多重結合活性化
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16J04365
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
川北 健人 大阪大学, 基礎工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | バナジウム / ピロール合成 / 窒素―窒素二重結合 / 切断反応 / 環化反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究代表者は、前周期遷移金属の低原子価金属錯体を用いた窒素―窒素多重結合の還元的切断反応および官能基化反応の検討を行ってきた。2017年度は、切断したアゾ化合物のさらなる変換反応の一つとしてアゾ化合物を窒素源としたピロールの合成に着目した。ピロールは最も単純かつ重要な複素環化合物の一つであり、天然物や医薬品、染料、機能性物質などに含まれる基本骨格であることからその合成意義は高く、新たな合成手法の開発は魅力的な研究対象である。 種々金属触媒のスクリーニングの結果、反応系中で発生させた低原子価バナジウム錯体を用いることで多置換ピロールを触媒的に合成できることを見出した。本反応は低原子価バナジウム錯体によりアゾ化合物の窒素―窒素二重結合を切断し、得られたイミドバナジウム種とアルキンの環化反応により進行していると推定している。本反応はアゾ化合物とアルキンのみを出発原料に用いており、出発原料由来の副生物を伴わないため原子効率に優れたピロール合成法である。また、購入可能なバナジウム塩化物と容易に調製可能なビスシリルアニリンを触媒に用いることで、対応する多置換ピロールを高収率で得られることを見出しており、本ピロール合成反応のより単純かつ高活性な触媒系を構築することにも成功した。 さらに、本ピロール合成反応の新たな触媒系を探索する中で、ルイス酸の添加によりバナジウムオキソ触媒を活性化できることを見出した。具体的には、バナジウムオキソ錯体のみではほとんど触媒活性を示さなかったのに対し、ルイス酸としてトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランを加えることで、ピロール合成に関して高い活性を示すことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
バナジウム錯体を用いることでアゾ化合物とアルキンの環化反応による多置換ピロールの触媒的合成に成功した。本反応はアゾ化合物の窒素―窒素二重結合の切断反応を経た、新たな窒素―炭素結合形成反応であることから、本研究課題の一部である「窒素―窒素二重結合の切断を経た窒素原子官能基化反応」を達成しているといえる。さらには、バナジウムオキソ錯体に対するルイス酸の添加効果も確認しており、新たな触媒系を開発することにも成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
バナジウム触媒によるピロール合成反応に関して、コントロール実験、中間体の単離、速度論解析によって詳細な反応機構の解明を行う。この反応機構解明によって得られた知見を基に、窒素分子の開裂を伴った窒素原子官能基化反応へと研究を展開する。具体的には、すでに報告されている窒素分子で架橋されている錯体を合成し、バナジウム錯体と反応させることで窒素分子の官能基化反応を行う予定である。また、ルイス酸によるバナジウムオキソ錯体の活性化に関しては、系統的にルイス酸のスクリーニングを行い、触媒の活性化機構の解明を行う予定である。
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Research Products
(4 results)