2016 Fiscal Year Annual Research Report
分散多型性の維持における分散シンドロームの進化生態学的研究
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16J04458
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
松村 健太郎 岡山大学, 環境生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | 行動学 / 昆虫 / 分散シンドローム / 選抜実験 / コクヌストモドキ / 地理的変異 / 繁殖成功 / 生活史形質 |
Outline of Annual Research Achievements |
コクヌストモドキを用いて①歩行分散選抜系統間の生活史形質の比較、②分散能力がその他の形質と相関関係を示す現象(分散シンドローム)における地理的変異を調査するために野外個体群の採集を行った。①については、歩行分散距離に対する二方向の人為選抜を行い、作成された分散距離の長い(Long)系統と短い(Short)系統を用いて、雄では交尾成功と受精成功を、雌では繁殖能力と寿命の生活史形質の測定をそれぞれ行った。雄においては、Long系統は交尾成功を増加させたが受精成功を減少させた一方で、Short系統は受精成功を増加させたが交尾成功を減少させた。すなわち分散能力の異なる系統間で雄の交尾成功と受精成功がトレードオフの関係であることが明らかになった。また、雌においては、Long系統は繁殖成功を増加させたが寿命が短く、Short系統においては寿命が長かったが繁殖成功を減少させた。すなわち分散能力の異なる系統間で雌の生活史形質がトレードオフの関係であることが明らかになった。この結果は、雌における分散は繁殖においてコストであるとした数多くの先行研究結果と異なるため、非常に興味深い。また、雌雄ともに分散選抜系統間でトレードオフが見られたことから、この結果は集団内で分散能力のバラツキが維持される原因を説明するかもしれない。②については、コクヌストモドキの野外個体群を東北地方から九州地方の広範囲で採集した。今年度だけで20の野外個体群の採集に成功し、来年度はさらにこの数を増やす予定である。採集された野外個体群を用いて分散シンドロームの調査を行うことにより、分散シンドロームの地理的変異やその進化について明らかになることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
歩行分散選抜系統間における生活史形質の測定は順調に行われ、得られたデータの解析も既に行われている。また、これらのデータをまとめた論文も、現在執筆中である。野外個体群の採集は順調に進んでおり、来年度に日本全国の採集を完了させる予定である。既に採集された個体群の飼育も問題はなく、実験に向けた準備が順調に進められている。
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Strategy for Future Research Activity |
採集したコクヌストモドキの野外個体群を用いて分散シンドロームの測定を行う。具体的には、分散能力の指標としての歩行移動距離、捕食回避行動としての死にまね行動の継続時間とその頻度、そして繁殖形質を測定する。また、昨年に採集できなかった地域での採集を、今年中に完了させる予定である。
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