2017 Fiscal Year Annual Research Report
フィリピンにおけるRSV感染症の疫学及び感染伝播に関する研究
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16J04592
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
乙丸 礼乃 東北大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | RSウイルス / 感染伝播 / 世帯内感染 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではRSV感染症の疫学的解析を通じてRSVの地域レベルでの流行拡大過程を理解し、予防施策の考案に繋がる知見を得ることを目的としている。 フィリピン東ビサヤ地区ビリラン島での5歳未満児を対象としたコホート調査で得られたデータについて、空間疫学的解析を行い、感染者の増加ともに地域内で有意な症例の集積の認められる箇所が経時的に変化する一方で、個々の集積の地理的規模は小さいことを示した。これにより、地区レベルもしくは世帯レベルでの小規模な伝播を繰り返されることで地域全体に流行が拡大していることが考えられた。 次に、コホート世帯内での二次感染率について検討し、5歳未満の同胞間での高い二次感染があることを示した。しかし、5歳未満のみを対象とし、世帯を単位とするこれまでのデザインでは、世帯での初発例がどのような感染源によって生じるのか、世帯間および異なる世代での感染伝播がどのように起きているのかの疫学的特徴については明らかでなかった。 世帯内及び世帯間での伝播を観察するための調査として、同サイトでの新たなコホート研究のセットアップを行い、1.感染症伝播の疫学的解析に重要な因子の一つである地域でのsocial mixing pattern(接触パターン)の調査、2.協力医療機関での迅速診断キットを用いたRSVの地域流行の検出、3.コホート世帯についてRSV流行中の急性呼吸器感染症のモニタリング及び検体採取を実施し、現在RSVの検出及び解析を行っている。この解析により、成人及び軽症も含めるとどの年齢が世帯を超えた伝播に重要な役割を持つのかを明らかにする。サンプルサイズを増やすため、地域流行の検出と流行調査を継続する予定である。これまでに得た地理的、分子疫学的解析を合わせ、世帯内、世帯間、地域レベルでのRSV感染症の伝播について統合的な理解を進めRSV感染症対策に効果的な方策を考案する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
RSV感染症の地域レベル及び世帯レベルでの伝播について得た知見を発展させるためのデザインの考案及びデータ収集を行い、解析を進めている。世帯内感染のデータについて発表準備を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでは個人あるいは世帯での感染に関する疫学的解析で地域レベルの流行を検討することは困難であったが、現在行っている調査についてサンプルサイズを増やして継続し、統計学的モデルを用いて収集したデータを解析する。これによりRSV感染症がどのように地域内で拡大するのか、予防にはどの年齢層を対象に設定すれば効果をあげられるかについてより確かな知見を得る。
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Research Products
(1 results)