2016 Fiscal Year Annual Research Report
最新の素粒子実験に基づく超対称大統一模型の構築とその現象論
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16J04611
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
桑原 拓巳 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | 超対称大統一理論 / 陽子崩壊 / 量子補正 / 超対称標準模型 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、素粒子標準模型の様々な問題点を一挙に解決する超対称大統一理論の検証を行うことである。 本年度の初めには、超対称大統一理論の予想する現象の一つである陽子崩壊に着目し、陽子の寿命に関する理論的不定性を取り除くことを行った。この研究では、超対称大統一理論の最小模型が抱える問題点を解決するミッシングパートナー模型と呼ばれる超対称大統一模型に着目した。この模型では、高い自由度を持つヒッグス場が対称性の破れを担っており、その自由度の高さから陽子の寿命に大きな量子補正を与えることが期待されていた。実際にこの模型において、陽子の寿命がおよそ60%程度長くなることを明らかにした。また、関連して超対称理論における4点フェルミ相互作用(フレーバーを破る過程などを記述する相互作用)の高次異常次元の導出も行った。 また、本年度は大型衝突型加速器実験(LHC)の新たな結果が出始める頃であり、超対称化した標準模型(超対称標準模型)の予想する粒子が発見またはそれらの粒子の質量などに新たな制限がかかることが期待されていた。そのため、超対称大統一理論の低エネルギー有効理論である超対称標準模型をより実験に即した形で取り入れることで、より現実的な超対称大統一理論の可能性についても議論を行った。特に、グルイーノと呼ばれるグルーオン粒子の超対称パートナー粒子の質量はLHC実験において非常に強く制限がされていた。一般に、重いグルイーノ粒子を仮定してしまうとくりこみ群による効果を受け、低エネルギーでのスカラー粒子(クォークやレプトンの超対称パートナー粒子)も重くなる。本研究では、付加的な粒子を加えて、ゲージーノ伝達機構による質量スペクトラムを仮定することで、重いグルイーノと軽いストップ粒子を実現しつつ、観測されたヒッグス粒子の質量も説明できる領域があることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度では、陽子崩壊などを記述する高次元演算子に関する高次の量子補正の計算を行った。本研究で行った高次量子補正の計算よりもより高次の量子補正による効果は、格子計算を用いたハドロンを含む崩壊率の計算の不定性よりも小さくなることが期待できる。また、現状の加速期実験を反映した超対称標準模型の構築を行った。そのため、「陽子崩壊に関する理論的不定性を取り除く」という本研究の目的に向けた進展をしているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度で得られた高次元演算子に関する高次異常次元を、より具体的な模型に基づいて数値的な評価を行う。また、初年度に提案した超対称標準模型を提案する際に仮定したスペクトラムを実現する、より具体的な模型の提案を行う。これらの研究について結果を論文にまとめ、国際会議等で発表を行う。
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Research Products
(7 results)