2016 Fiscal Year Annual Research Report
難治性骨代謝疾患の疾患特異的iPS細胞を利用した病態解明:低身長の治療標的の探索
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16J04675
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田村 麻由子 東京大学, 医学系研究科 小児医学講座, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | 難治性骨疾患 / ビタミンD受容体 / ビタミンD依存性くる病2型 / Kenny-Caffey症候群2型 / FAM111A / Smith-Lemli-Opitz症候群 / 低身長 / 小児内分泌疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年度、私は以下の通り、①遺伝性くる病の発症機序の解明のためビタミンD受容体(VDR)の変異体の機能解析、②Kenny-Caffey症候群2型(KCS2)の発症機序の解明を目指した新規原因遺伝子の機能解析、③Smith-Lemli-Opitz症候群(SLOS)の臨床症例の遺伝子解析を進めるなどし、確実な研究成果を上げた。成果の一部は、すでに専門誌へ原著論文として掲載が決定している。また、研究成果は高い評価をうけ、2016年度の東大小児科同窓会総会にて、研究奨励賞を受賞した。 ①VDR機能解析について;低身長を伴う難治性小児先天性疾患のひとつであるビタミンD依存性くる病2型について実際の患者に見出されたVDR遺伝子の新規変異体は、1アミノ酸置換であったが、コファクターやレチノイドX受容体との分子間相互作用の低下、リガンド結合能の低下、核移行シグナルの低下も見られ、これまでにない機序でVDR機能が喪失していることが考えられた。 ②FAM111Aの機能解析について;別の難治性小児先天性疾患の一つとしてKCS2の原因遺伝子であるFAM111Aについて機能解析を進めた。まず、免疫組織化学にて、FAM111Aの組織局在を観察した。FAM111Aは軟骨組織全体に強く発現しさらに細胞表面に発現していることがわかった。また、wild type、複数の変異体のFAM111Aを導入したベクターを作成し、トランスジェニックマウスを作成した。さらに、KCS2患児二名より細胞を採取し、それより疾患特異的iPS細胞を樹立した。 ③SLOS症例の遺伝子解析について;さらに低身長などの成長障害をきたす疾患の一つであるSLOSについて、臨床症例の遺伝子解析、家族解析を行い、原因遺伝子の新規変異を同定するとともに発症機序の考察、治療法の考察について成果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①VDRの機能解析;くる病原因遺伝子の多型の解明を目的として研究を行った。ある患者のVDRの変異として一アミノ酸置換の新規の変異を見出した。そして。この変異体VDRでは,コファクターやレチノイドX受容体との間の相互作用の低下や、リガンド結合や核移行シグナルの低下など、全く新しい機序で大きな機能異常が生じていることを実験的に明らかにした。本成果は遺伝子多型と疾患発症機序の多様性の理解を深め、当初の目的を十分に達成できた。現在論文を投稿中である。 ②FAM111A機能解析; 本年度は、機能未知のFAM111A遺伝子に由来するKCS2の実験研究モデルの確立を目指した。まず、ヒト成人とマウス胎児の軟骨において免疫組織化学染色によりFAM111A遺伝子の組織中での発現を比較解析し、マウスモデルの妥当性を確認した。そしてFAM111A変異マウスを複数系統作成した。さらに、患者2名由来のヒトiPS細胞を樹立することに成功した。このように今後の研究推進の重要な基礎を確立し、おおむね本年度の目標を達成できた。 ③SLOS症候群症例の遺伝子解析; SLOSの新規患者について、発症機序の解明と治療方針の確立を目的として研究を行った。SLOSは7-dehydrocholesterol reductase (DHCR7) 遺伝子異常により胎生期よりコレステロール産生障害を起こし、多発奇形、発育障害、知的障害を特徴とする希少疾患である。患者のDHCR7遺伝子の解析、家族解析を行い、既報の変異と新規変異のコンパウンドヘテロ変異を発見した。臨床症例を通し、臨床所見、これまでに報告の少ないコレステロール治療を行った。新規変異の同定に加え、治療法についても報告例がごく少なく、重要な遺伝学的・臨床的な成果として学術誌に論文を投稿し、掲載が確定した。これらは予期しない方面への大きな進捗であった。
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Strategy for Future Research Activity |
【FAM111A機能解析について】 免疫組織学的解析をすすめ、全身の器官・組織について局在を観察するとともに,FAM111A と類似した発現パターンの遺伝子が無いか先行研究・データベースと比較することで,FAM111Aの機能や相互作用する遺伝子を推定する材料とする.また軟骨内骨化の過程を再現するATDC5 細胞株に,FAM111A の正常型または変異型を定常発現させたものを用い.細胞の分化の過程を観察し,real time PCR で定量した各分化段階におけるⅡ型コラーゲンやⅩ型コラーゲンのmRNA 量の変化を測定する。これにより,正常型,変異型の過剰発現が他の分子の発現や骨分化に与える影響を明らかにする。同じ実験を骨芽細胞の培養系でも行う。 疾患特異的iPS 細胞を用い,骨・軟骨細胞等への分化を誘導し,FAM111A異常症-KCS2 をin vitro で再現する.その分化細胞の特性や,各種RNA,タンパク質の発現パターン,ゲノムのエピジェネティック変化を解析する.FAM111A変異による細胞特性の変化を,治療効果の評価系として使用できないかを検討する. 作成したトランスジェニックマウスに低身長,副甲状腺機能低下,低カルシウム等の表現型が現れるかを解析する.また,成長骨軟骨組織を組織学的に解析し,成長障害の機序を検討 する.骨軟骨組織における骨代謝関連遺伝子等の発現について,網羅的な解析により,野生型と比較する.
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Research Products
(5 results)
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[Journal Article] Novel DHCR7 mutation in a case of Smith-Lemli-Opitz syndrome, showing 46,XY disorder of sex development2017
Author(s)
Mayuko Tamura, Tsuyoshi Isojima, Takeshi Kasama, Ryo Mafune, Konomi Shimoda, Hiroki Yasudo, Hiroyuki Tanaka, Chie Takahashi, Akira Oka, Sachiko Kitanaka
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Journal Title
Human Genome Variation
Volume: -
Pages: -
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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[Presentation] 家族性異常アルブミン性高サイロキシン血症の12歳女児2016
Author(s)
小田洋一郎, 山口有紗, 杉本美紀, 鵜沼麻実子, 平田可愛, 堀江豪, 永井佳実, 佐々木元, 本村あい, 田村麻由子, 北中幸子
Organizer
第89回日本内分泌学会学術総会
Place of Presentation
国立京都国際会館京都(京都府京都市)
Year and Date
2016-04-21 – 2016-04-23
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