2017 Fiscal Year Annual Research Report
形態の変化が適応放散に至るまでの経時的進化機構の解明
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16J04692
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
齊藤 匠 東北大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 水棲目 / 適応 / 生殖隔離 / 飼育実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は湖沼型ヒラマキの飼育システムの確立を行い、琵琶湖産カドヒラマキを含め、湖沼型、湿地型にかかわらず低コストで継続的な飼育ができることが判明した。また、予定よりも早く次世代シーケンサーを用いたMIG-seq法が利用可能であったため、ゲノムワイドなSNPsを用いてより精密なヒラマキミズマイマイ類の遺伝的な関係を把握することができた。これによりmtDNAのマーカーには一部、交雑や祖先多型などによるものと思われる系統の不一致が存在することが明らかとなった。 この遺伝的な背景情報と確立した飼育システムを用いて本年度から交配実験を開始しており、湖沼型と湿地型では一定の生殖隔離こそ存在するものの、問題なく交配可能であることが判明した。また、本年度は研究対象を湖沼のヒラマキミズマイマイ類に加えて海洋島である小笠原のヒラマキミズマイマイ類、さらにカドヒラマキと同様に湖沼へ適応していると考えられるビワコミズシタダミなど琵琶湖産の腹足類数種にも拡大することで、より多角的に湖沼への適応とそのスピードを比較検証することを目指した。 加えて、形態測定の方法として従来より用いられる伝統的な計測法に加え、楕円フーリエ変換に基づく輪郭のシェイプを定量化する方法を導入した。この手法により、多個体の定量化をより自動化して行うことができるため、形態測定の精度や定量性を向上させることできた。この結果をもとに、GLMによって解析を行ったところ、生息環境の底質が殻形態に大きな影響を与えていることが改めて確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はヒラマキミズマイマイ類の飼育システムの確立や予定よりも早い次世代シーケンサーの利用といった点で予定以上に順調な進展が認められた。さらに形態測定も新たな手法を導入したことにより、スムーズに行うことができるようになった。 飼育実験は時間がかかるため、結果が本格的に判明するのは来年度になると考えられるが、次世代シーケンサーを利用することで、交雑や祖先多型などの影響を受けにくい高解像度、高精度な遺伝情報が得られたことは最も大きな進展であった。 反面、湖沼における適応実験や湖沼環境の定量化は波の定量化や再現が非常に難しく、定量化については地形の解放度から推測するなどの方法で対応する予定である。また、飼育実験は継続的な淘汰実験よりも、流されるかどうかに着眼した、短期的なものに置き換えて解決を図る予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は出揃った遺伝情報のデータと、来年度で揃うことが期待できる飼育実験のデータ、形態データをもとに、それぞれ成果として学会発表及び論文化する予定である。さらに次世代シーケンサーを交配実験を行った系や、湖沼のヒラマキミズマイマイ類に幅広く用いて、適応的な遺伝子の探索を行う。 また、一部のヒラマキ類についは進化的な起源が不明であったため、調査地域を東アジアから東南アジア、南アジアに拡張する必要がある。そこで、海外での追加調査を計画している。
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Research Products
(10 results)