2016 Fiscal Year Annual Research Report
量子臨界相の分類と非従来型量子臨界相の量子磁性体における実現
Project/Area Number |
16J04731
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
古谷 峻介 国立研究開発法人理化学研究所, 古崎物性理論研究室, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 量子臨界相 / スピンネマティック相 / 低次元量子磁性体 / 幾何学的フラストレーション / 共形場理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
量子相の分類は近年の凝縮系物理学・統計物理学における重要な問題である.対称性に守られたトポロジカル相に代表されるような新しい視点や概念が量子相の分類研究から派生している.私は既存の対称性に守られた量子相の概念を量子臨界相へと広げ,対称性に守られた量子臨界相と呼ぶべき量子臨界相が存在することを以下の具体例とともに示した.スピンSの量子スピン鎖は非可換ボソン化によりレベル2SのSU(2) Wess-Zumino-Witten (WZW) 理論に写されることが知られているが,その基底状態は対称性の制限や結合定数のfine-tuningがなければ一意であり,最低励起状態から有限の励起ギャップで隔たれる.しかし,SU(2)対称性と1サイト並進対称性を課すと,2Sが奇数の場合には基底状態はギャップレス,または,1サイト並進対称性が自発的に破れて2重に縮退し,かつ励起ギャップのある基底状態のいずれかになる.更に,ギャップレス基底状態は上記のWZW理論とは別のレベルk (<2S) のSU(2) WZW理論に対応することを,非摂動的議論にもとづいて示した.2Sが偶数の場合にはこのような制限は課されない.このことから,奇数レベルのSU(2) WZW理論に対応する量子相は,対称性存在下では相転移を経ることなしにギャップのある量子相へつながらないことが従うため,この量子臨界相は対称性に守られているということができる. また,幾何学的フラストレーションのある1次元強磁性体において実現することが知られている量子臨界相,スピンネマティック液体相,についても研究を行った.今までスピンネマティック液体相を実験的に検出する手法が盛んに議論されてきたが,本研究では,電子スピン共鳴実験を行うことで,温度や磁場の大きさを変化させることなく,スピンネマティック液体相の実験検証を行えることを示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
対称性に守られた量子臨界相について提唱する論文,幾何学的フラストレーションのある1次元強磁性体におけるスピンネマティック相の電子スピン共鳴実験の提案の論文の2本を出版した.これらの非従来型量子臨界相について,新しい知見が得られており,研究課題がおおむね順調に進展していると判断することができる.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題においてこれまで,非従来型量子臨界相の研究は主に1次元量子磁性体を対象に行ってきた.今後の方針として,研究対象を2次元や3次元の量子相へ拡張することが考えられる.coupled-wire constructionなどの1次元量子系から2次元・3次元量子相を構成する手法を取り入れて応用することで,今後の研究を推進していく.
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