2016 Fiscal Year Annual Research Report
認知機能を高める海馬グリコゲンローディング法の開発
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16J05042
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
征矢 茉莉子 筑波大学, 人間総合科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | 海馬グリコゲン / グリコゲンローディング / 認知機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトの身心のパフォーマンスとして持久力と認知機能が挙げられる。最近の研究から、この2要因が相関することが分かり、それらの関係性を暴くことはもちろん、それらを共に高めるトレーニングやコンディショニング法の開発に注目が集まるものの未だ決着をみない。古くからアスリートの持久性運動能力向上に寄与してきたグリコゲンローディング(GL)は筋グリコゲン貯蔵量を増加させることで持久性運動能力を高めることが報告されている。本研究ではグリコゲンローディングが筋と同様に海馬に存在する貯蔵型エネルギーであるグリコゲン貯蔵量を増加させることで認知機能を高め、ひいては持久力を高めるコンディショニングとして新たな付加価値を持ちうるかどうかを明らかにすることを目的とした。平成28年度はGLがラットの認知機能に及ぼす効果の解明をするために、認知機能評価するための新たな行動実験装置を導入し、GLの効果を検証するために必要な新規物体再認テストおよび新規物体位置再認テストの条件検討を行った。その結果、新規物体位置再認テストではGLの効果を評価するために必要なテスト課題の難易度設定に成功し、新規物体再認テストにおいても類似度の高い物体を作成することで難易度設定の可能性が示唆された。多くの行動実験では認知機能が低下したラットの脳機能を評価するものが多く、健常なラットの脳機能向上効果を評価できる課題は少ない。特に、絶食や水泳などのストレスを課さずにラットの脳機能を評価することができ、さらに難易度が設定できるものは現在のところ本研究で用いたテストのみである。したがって、本実験で確立した高難易度のテストを用いて次年度にGLの効果を明らかにすることができれば、様々な運動強度や様式の運動実験への応用も期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度はGLによる認知機能を評価するために新たに導入した「新規物体再認テスト」と「新規物体位置再認テスト」の条件検討を、GLを課していない通常のラットに対して行った。これらのテストを用いた先行研究は古くから数多く存在するものの、運動効果を検討したものはこれまでにない。そのため、当初予定していたGLの効果を検討する前に、GLの効果を検討するために必要な条件検討を重ねる必要性が浮上した。特に、ラットにとって簡単な認知課題では天井効果によりラットの認知機能を正確に測定することができない可能性があるため、それを防ぐために認知課題に用いる物体の種類や物体の移動距離を工夫する必要があったが、それらの条件研検討を経て認知課題の難易度を設定に成功した。実験を進める中で新たに明らかとなった問題へも対処し、GLの効果を検討する準備を整えることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、平成28年度に確立した高難易度の新規物体位置再認テストを用いて、GLにより海馬グリコゲン貯蔵量が増加したラットの認知機能を測定する。また、新規物体再認テストにおいても、類似度の高い物体を作成することで難易度設定が可能かどうかを現在検討しており、これに成功すれば新規物体位置再認テスト同様に新規物体再認テストでもGLの効果を検証することが可能となる。また、平成29年度実施予定である課題2の認知機能に及ぼす海馬グリコゲン代謝の役割の解明について、海馬へのグリコゲン分解阻害剤または乳酸取り込み阻害剤の局所投与による認知機能への影響も同時に検討していく予定である。
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Research Products
(2 results)