2017 Fiscal Year Annual Research Report
強相関電子系における新たな光誘起秩序相の探索と実時間ダイナミクスの解明
Project/Area Number |
16J05078
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高三 和晃 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 光誘起相転移 / 強相関電子系 / トポロジカル相 / 重い電子系 / 近藤効果 / フロッケ理論 / フラストレート磁性体 / 擬一次元磁性体 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、固体に強いレーザーを照射することで秩序相を誘起する研究が注目を集めている。本研究課題においては、多様な秩序が競合する強相関電子系に注目し、新たな秩序相を実現する理論提案、秩序相形成のダイナミクスの解明を目標に研究を行ってきた。本年度の主要な実績としては(1)重い電子系におけるこれまでの解析結果を論文として出版、(2)直流電場や低周波電磁場(THz波)による物性制御方法を提案したことが挙げられる。
(1)レーザー照射下の非平衡定常状態において、重い電子系がどのような相を示すか、という問題に取り組んだ。フロッケ理論から導出した有効模型より、c-f混成の空間構造が局所的な場合には、近藤結合は増幅、非局所的な場合には抑制されることが分かった。多くの物質ではc-f混成が非局所的であることを踏まえると、基本的に近藤結合は抑制され、フェルミ液体相から磁気秩序相への相転移が起きる。さらに、レーザー照射下のトポロジカル近藤絶縁体ではトポロジカル相転移が起きることも分かった。これらの結果について論文にまとめ、Physical Review B誌に投稿・出版された。
(2)モット絶縁体に絶縁性を壊さない程度の直流電場・低周波電磁場を加えることを考え、これによってモット絶縁体の磁気秩序やトポロジカル秩序をコントロールできることを明らかにした。まず、ハバード模型について摂動計算を行い、電場方向の反強磁性結合が増強されることを見出した。それを利用して(i)フラストレート磁性体, (ii)擬一次元磁性体の制御を考えた。(i)に関しては、例えば、三角格子系で電場誘起量子スピン液体が、(ii)に関しては、スピン1の磁性体にて電場誘起ハルデイン相が実現できることを明らかにした。これらの結果については、論文(プレプリントは、arXiv:1802.04311)にまとめ、現在投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、以前より取り組んでいた課題(重い電子系での光誘起相転移)に関する論文を出版できたのみならず、新たな課題(直流電場・低周波電磁場による磁気秩序やトポロジカル秩序の制御)に取り組むことが出来た。特に、新たな課題に関しては、これまでの高周波のレーザーによる駆動で生じる困難(加熱が起きる点・短時間のみの制御でないと難しい点)を乗り越えており、高周波の光に関する研究を中心に展開してきた当分野において、新しい方向性を示すものであり、大きな成果であったと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、今年度新たに展開した「直流電場・低周波電磁場」に関する方向性を、さらに推し進めて行きたいと考えている。特に、電場が誘起する「金属-絶縁体転移(絶縁破壊)」に関して予備的な研究を行っているので、これをまとめ、論文として出版する。また、光による秩序の制御に関して、電子相関効果をより直接的に取り入れた数値計算(非平衡動的平均場理論)を行うことを考えている。それによって、十分には取り組めていない「秩序相形成のダイナミクスの解明」という点にアプローチしたいと考えている。
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Research Products
(16 results)