2017 Fiscal Year Annual Research Report
層状半導体二次元結晶を用いたスピントロニクスと情報処理
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16J05099
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
張 奕勁 大阪大学, 産業科学研究所, 特別研究員(SPD)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 遷移金属カルコゲナイド / 二次元物質 / p-n接合 / LED / 太陽電池 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度はマックスプランク研究所(MPI)における測定装置立ち上げに関して大きな遅延が生じたが、その間に論文の執筆や投稿、エディターやレフェリーとのやり取りを行った。本年度中に、3本の筆頭著者論文と3本の共著論文を学術誌に発表した。また、当初の研究計画には含まれていない研究を開始した。 これまで遷移金属カルコゲナイド(TMD)研究の主流は二次元シートを用いたものであるが、それをチューブ状に丸めたTMDナノチューブに着目した。この物質は、グラフェンから作られたカーボンナノチューブのように擬一次元系であり、二次元シートTMDよりも様々な側面でより実用化に適していると報告されている。今回は先行研究ではまだ調べられていないナノチューブの光・電子素子への応用の可能性を探索し、TMDナノチューブ中にp-n接合を形成することに始めて成功した。形成されたp-n接合はダイオードのような電気的な整流作用を示すだけでなく、発光ダイオード動作や太陽電池のようなphotovoltaic効果も示した。特にphotovoltaic効果における光子から電子への変換効率が、二次元シート中に形成されたp-n接合の変換効率よりも5倍程度高いことを突き止めた。効率上昇の要因に関してはまだ定かではないが、可能性の一つとして局在表面プラズモン(LSP)の効果が考えられる。LSPは金属微粒子の表面に存在することがよく知られており、これら微粒子を光学活性な半導体と混合することで光⇔電気の変換効率が上昇することが知られている。LSPは二次元半導体の表面には存在しないが、ナノチューブのような閉じた曲面の表面には存在することができる。今回我々が発見したナノチューブにおける光子→電子変換効率の上昇はこのLSPが関与しているのではないかと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度はドイツと日本における習慣の違いや装置の度重なるトラブルにより、予定していた測定装置の構築に大幅な遅延が発生した。その間、実験データを取りまとめて論文の執筆・投稿を行った。また、新奇材料としてこれまであまり着目されていなかったTMDナノチューブに注目し新たな実験を行った。本研究で初めてナノチューブ中にp-n接合を形成することに成功し、この接合がTMDの二次元シートの場合よりも光から電子への変換効率が高いことを確認した。この結果は光通信と物質中での情報演算を組み合わせる際に二次元シートよりもナノチューブがより適しているということを示唆している。この結果をまとめた論文は先日学術誌に採録された。今年度はこの他に主著論文2本と共著論文3本の計6本の論文を発表した。また、1件の招待講演を含め3件の国際学会発表を行った。以上のことから、当初の計画では遅れが生じているものの、当初予期していなかった方向での研究成果があり、全体として研究は順調に進んでいると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
遅れていた装置開発がほぼ完了したため、今後は当初の計画に従い低温磁場下における遷移金属カルコゲナイドの顕微分光実験を本格的に開始する予定である。 また、今年度中に新たに発見した遷移金属カルコゲナイドナノチューブの可能性についても更に研究を進めていきたい。
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Research Products
(9 results)