2016 Fiscal Year Annual Research Report
褥瘡部の新たな創部痛発生機序解明に基づく客観的評価指標の開発
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16J05219
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
後藤 大地 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | von Frey test / 機械的痛覚閾値 / ACTH / MC2R / 11βHSD1 / 11βHSD2 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、創部痛認知によるストレス反応に着目した創部痛発生機序を解明し、創部痛バイオマーカーの開発目指す研究である。その目的を達成するため、まず創傷モデルラットにおける創部痛の評価法確立が必要であった。既存法であるvon Frey test(VFT)と呼ばれる機械的痛覚閾値測定方法の、創傷モデルラットに対する適応性を確認した。2種類の鎮痛薬(インドメタシン、モルヒネ塩酸塩)ならびに1種類の起炎物質(λ-カラギーナン)の投与を介入群、それぞれのVehicle投与を対照群とし、VFTで測定した機械的痛覚閾値を比較した。結果として、VFTは介入群と対照群の痛覚閾値の差を検出することができ創傷モデルラットに適応可能であることがわかった。本研究成果は16th World Congress on Painおよび第36回日本創傷治癒学会で発表した。現在論文執筆中である。 次に、創部痛に対する副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の影響を観察する実験を予定しており、現在同実験のプレテストを現在行っている。まず、創局所でのACTHの影響を観察するため、創部におけるACTH受容体(MC2R)ならびにコルチコステロン合成酵素である11βHSD1と11βHSD2の発現を観察した。MC2Rは免疫組織化学で、2つの酵素はRT-PCRと免疫組織化学を用いて解析した。結果として、MC2Rはケラチノサイト、血管内皮細胞などでタンパク質レベルで発現していることが確認できた。2つのコルチコステロン合成酵素は肉芽組織においてmRNAで、またケラチノサイトや血管内皮細胞でタンパク質レベルで発現していることが確認できた。したがって、創局所においてコルチコステロンが合成され、創傷治癒や創部痛に何らかの影響を及ぼす可能性が有ることが示唆された。 上記結果を踏まえ、次年度は本実験を進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目に実施した創傷モデルラットに対する機械的痛覚閾値測定方法の適応性を確認する実験は、その後の実験を進めていく上で必要不可欠であり、かつ結果に大きく影響する部分であるため慎重をきして実施した。従って、1年という歳月が費やされたが仮説どおりの結果を導くことができ、その成果は国際学会で発表し、現在論文作成中である。本結果を踏まえて、現在は次に行うべき創部痛に対する副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の影響を観察する実験のプレテストを行っている。2年目よりスムースに本実験に移れるよう準備できていることから、おおむね順調に進展していると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
創部痛に対するACTHの影響を観察するため、創傷モデルラットの創局所にACTHの投与と阻害を行い、創部痛ならびに関連する遺伝子発現を観察していく。その中から、創部痛をよく反映すると考えられる物質を抽出し、バイオマーカーとしての妥当性を検証していく予定である。 研究成果は随時学会での発表ならびに専門誌への投稿を行っていく。
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