2016 Fiscal Year Annual Research Report
脳内ニューロン間の協調とその作用の行動学的・生理学的解析
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16J05301
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鹿野 悠 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 海馬 / テトロード記録 / 心拍操作 / 体感時間 / 行動解析 / 行動解析 / 電気生理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
脳と心臓は密接な関係性をもって活動する(感情と心拍数の関係などに代表される)。しかし従来、脳(特に海馬)は学習・記憶との関連が、心臓は疾患との関連が、別々の分野で異なる研究者の手で調べられてきた。しかし脳と心臓がいかに互いの活動に影響を及ぼすのかについて着目した知見は乏しい。そこで私は末梢器官(心臓)が中枢(脳)の活動に与える影響の解析を目指している。具体的には個体内に流れる体感時間を脳内ニューロンが協調的に作り出すメカニズムと、心拍リズムがその速度調節にどう関与するかを解明したい。そもそも日常的にヒトは時間が一定の速度で流れていると知覚している。これには体内で一定のリズムを刻むシステムの存在が想定されるが、脳波は不定期であるし、概日リズムは1日で1サイクル回る極めて遅いシステムであり関与は考えにくい。そこで数十秒~数十分の時間知覚に着目し、心臓の関与に焦点を当てた。さらに海馬は外界で連続的に起じた事象を順序立てて記憶する機能を持つ。個々の事象の持続時間や事象間の隔たりを記憶する際に心拍リズムが重要な役割を果たすのではないかと考えた。これらをラットを用いて解明するために、私はこの1年間ゼロベースから実験系を構築してきた。初めに自由行動下のラットから海馬の個々の神経活動と心電図を同時記録する技術を習得し、両者の相関を即時的に検出することを可能にした。次に記録中に心拍数を任意の頻度に制御(心拍数増加と減少をどちらにも)するシステムを独自に開発した。これにより心拍操作によって体感時間が加速・減速するかを定量的に解析する技術が整った。さらにラット自身に時間経過を計測させるシステムを考案し、行動実験装置を自ら作成した。これらによってヒトを用いずに神経活動・心拍数・行動の関連性を詳細かつ定量的に追及する土台が整った。本成果をもとに末梢器官が中枢の活動に与える影響の解析を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
現在までの1年間で本実験の遂行に必須な土台である電気生理記録技術習得、心拍制御技術開発、行動試験構築のすべてを完遂した。3つの進捗を詳細に報告する。1. 電気生理記録。ラットに手術を施し海馬へのテトロード電極をはじめ各電極を備えた微小装置を頭頂部に埋め込んだ。これにより脳波・神経活動・心電図・筋電図・呼吸リズムの大規模同時記録を行った。本システムは自由行動下で記録可能で、出力である行動と中枢や末梢の活動の直接的関連を解析出来る極めて有用な技術である。2. 心拍制御技術開発。ラットに開胸手術を施し心臓に刺激電極を埋め込み心拍を制御する技術を開発した。結果、安静時の心拍(6.5-7 Hz)を電気刺激により13-14 Hz程度に上昇させることに成功した。一方で頸部迷走神経束に刺激電極を埋め込み4 Hz程度に減少させることにも成功した。心拍数の評価は1の電極埋込手術を併せて施し自由行動下で得た心電図を自ら作成した解析プログラム(MATLAB)で処理して行った。これらの手法は薬剤投与と異なり心臓に標的を絞り任意の時間幅で可逆的に心拍操作を行う点で、電気生理学において新規性と応用性が高い。3. 行動課題構築。ラットの時間知覚を解明するため、①長い時間(分単位)の解析、②運動学習では獲得出来ないルール、③体感時間の変化を定量的に検出可能な課題を構築した。時間弁別課題と5分間隔餌提示課題を考案し、本研究室が保有する3Dプリンターを駆使して実験装置を自作した。前者ではラットは提示された持続音と基準音の長短を判断する。後者では課題用ペレットが5分おきに20-30秒間だけ提示され、ラットはそれを見つけて獲得する。提示中にラットが見つけなければペレットは装置の外に回収される。 これらの記録・操作、そして課題を通してラットに内在的な時間の流れを作りださせ、それを検出し、人為的に操作することを目指す。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は今までに構築した実験系を用いてデータを取得する段階に入る。進捗に記載した3項目の手法を用いて行動レベル・神経活動レベルで検証すべき事項は主に4つである。まず海馬が分単位の時間を知覚する機構を解明するために、行動課題中の神経活動を詳細に解析する。具体的には秒や分単位で周期的な発火活動をしたり、ある時間長を特異的に表象して活性化するニューロンが存在するかを検証していく。海馬では既に数秒単位で経過時間を表象する神経活動が発見されており、これが分単位でも同様に見られるのか、はたまた全く異なる計時機構が存在するのかを検証する。次に、行動課題中に心拍刺激をすることで行動レベルで体感時間が加速、減速するかを検証する。例えば5分間隔餌提示課題では、エサ場にエサが提示されているかラットが確認する時間間隔が、通常は5分程度であるが、心拍刺激による心拍数増加/現象によって4分間隔や6分間隔になるのかを検証する。心拍刺激については、すでに確立した電気刺激とは別途でアデノ随伴ウィルスを用いた心筋でのチャネルロドプシン発現で、光遺伝学的に心拍制御することも目指す。これにより刺激によるアーティファクトを完全に無くすことが可能となる。次に、心拍制御によって生じる脳の変化を、脳波・神経活動から探る。拍動の情報は大動脈や頸動脈にある圧受容体が検知し求心性の神経によって脳へ伝わる。この情報を反映する脳波の振幅、同期活動の頻度、個々の神経活動を探る。最後に、行動課題中に心拍刺激を行い、体感時間を表象するニューロン群の活動が時間軸方向にシフトするかどうかを検証する。 1回に得られる行動課題実験の電気記録データは3~5時間に及ぶ予定である。通常の自由行動課題の記録時間がおよそ1時間であることを考えると、解析に多大な時間を要することが予想されるため、データを早期に取得し、半年~1年のスパンでの解析を計画している。
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Research Products
(3 results)
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[Journal Article] SNARE Molecules in Marchantia polymorpha: Unique and Conserved Features of the Membrane Fusion Machinery2016
Author(s)
Takehiko Kanazawa, Atsuko Era, Naoki Minamino, Yu Shikano, Masaru Fujimoto,Tomohiro Uemura, Ryuichi Nishihama, Katsuyuki T. Yamato, Kimitsune Ishizaki,Tomoaki Nishiyama, Takayuki Kohchi, Akihiko Nakano, Takashi Ueda
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Journal Title
Plant Cell Physiology
Volume: 57(2)
Pages: 307,324
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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