2016 Fiscal Year Annual Research Report
リン脂質フリッパーゼATP10AのPCフリップ活性が制御する細胞機能の解明
Project/Area Number |
16J05381
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
内藤 朋樹 京都大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | リン脂質フリッパーゼ / ATP10 / ホスファチジルコリン / 細胞膜 / 膜ダイナミクス / P4-ATPase |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞膜はリン脂質の二重層によって構成されており、その組成は外葉と内葉とで異なっている。フリッパーゼは外葉から内葉へとリン脂質を移動させることでこの非対称性を形成、維持している。これまでに細胞膜に存在するリン脂質フリッパーゼATP10Aがホスファチジルコリン(PC)特異的なフリッパーゼであることを見出したが、細胞における生理的な機能は全く不明である。本研究ではATP10AのPCフリップ活性が担う細胞機能を明らかにすることを目的としている。 現在ATP10AはPCをフリップすることで細胞膜のダイナミクスを調節し、細胞運動能や浸潤能に寄与するのではないかと疑っている。そこで悪性度(細胞運動能、浸潤能)の高い乳がん細胞であるMDA-MB-231細胞を用いて、ATP10Aのノックアウト(KO)細胞を樹立した。今後はアッセイ系を確立し、ATP10Aががん悪性度の獲得に寄与するかどうかを調べていく。 またATP10AのPCフリップ活性の調節因子の探索を行った。ATP10Aを免疫沈降し、共沈降したタンパク質をマススペクトル解析によって同定したところ、いくつかの興味深い候補タンパク質が得られた。これらのタンパク質の中にATP10Aのフリップ活性を制御するものがあると期待している。 その他、ATP10ファミリー間でN末端細胞質領域を入れ替えたキメラタンパク質を作製し細胞内局在を観察すると、ATP10の細胞内局在はそのN末端領域によって決定されることが示唆された。したがってATP10のN末端領域と相互作用するタンパク質や脂質を同定することで細胞内局在決定の分子機構を突き止められると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的はリン脂質フリッパーゼATP10Aが制御する細胞機能ならびみその調節機構を解明することである。当該年度の研究によって、ATP10A KO細胞の樹立に成功したこと、ATP10Aと相互作用するタンパク質がいくつか突き止められたことは計画通りである。 また所属するグループにおいてATP10Aが細胞膜を変形させていることを証明する結果が得られ、共著として論文投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
ATP10A KO細胞を用いて、細胞運動・浸潤能の獲得に寄与するかどうかを調べていく。方法としてはスクラッチアッセイやライブセルイメージングによる観察を用いる予定である。 フリップ活性の調節機構の探索については、当該年度で得られた候補タンパク質の過剰発現・ノックダウン・KOを行った状態でATP10Aのフリップ活性を測定し、関与を探っていく。 また細胞内局在のメカニズムを解明するために、N末端細胞質領域に着目し結合タンパク質・脂質の探索を行っていく。
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