2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16J05435
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Research Institution | Hanazono University |
Principal Investigator |
清水 俊史 花園大学, 文学部, 特別研究員(PD) (40718996)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 書写聖典 / 経巻崇拝 / 隠没伝承 / 結集伝承 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、当初の研究計画通りに文献読解を進めた。スリランカ上座部における仏説論について、後代の教理的理解を中心に考察した。また、これまでの成果と合わせて、上座部における仏説論の全体像を、説一切有部や大乗仏教の教理と比較した。 とりわけ、これまで度々主張されてきた仏説論と三蔵の関係性について見直した。そして、仏説論とは、正統性に疑義のある文献が“仏陀の言葉”に叶うことを証明するための後付け理論であって、必ずしも三蔵の範囲を確定するための理論ではないことが明らかとなった。そして、三蔵の範囲画定については、結集と呼ばれる教団会議の承認が重要であると結論付けた。これと関連して、上座部における三蔵の結集伝承と隠没伝承とを、北伝仏教に残る両伝承と比較することで、「結集によって成立した三蔵が、未だ何一つとして失われていない」という上座部が抱いている聖典観の特異性をより仔細に示すことが叶った。 また、上座部における「書写聖典」「経巻崇拝」という二点についても考察を進めることができた。さらに、その理解を大乗仏教や説一切有部のそれと比較することで、上座部がもつ聖典観が種々の角度から明らかにした。 なお、以上で述べた成果は、本研究課題と関連する分野にも波及し、相乗効果を得ることができた。具体的には、上座部註釈家たちの年代論・思想系譜の確定に大きく役立った。 これらの成果の一部は学術雑誌などで既に公表されており、これからも学会での口頭発表、ならびに学術雑誌の紙面上で発表していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
第一に、仏説論と三蔵の範囲画定との関係性を再検討し、上座部における仏説論の位置付けを明確にした。第二に、これと関連して、上座部仏教における結集・隠没の両伝承と、三蔵の関係性についても新知見を得ることが出来た。以上二点より、当初の計画以上に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
聖典解釈という視点から、「仏陀の言葉」が上座部においてどの様な意味を持っていたのかを考察していきたい。
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Research Products
(9 results)