2016 Fiscal Year Annual Research Report
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16J05446
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
大場 淳平 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 宇宙論 / 修正重力理論 / 重力定数 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的である重力理論の解明に向けて、大きく2つの研究に取り組むことができた。 第一に、Planck衛星による宇宙マイクロ波背景放射(CMB)の最新の観測結果を用いて修正重力理論の1つであるスカラーテンソル理論への制限を行った。パラメータ推定にはマルコフ連鎖モンテカルロ法を用いた。その結果、アインシュタインの一般相対性理論からのずれを表すカップリングパラメータに対して、WMAP衛星の観測結果を用いた先行研究よりも約1桁厳しい制限を得ることができた。また、スカラーテンソル理論の特徴である重力定数の時間発展に関しても着目し、地上実験で測定されている現在の値とCMBが放射された時代における値とのずれへの制限を得た。こちらに関しても先行研究と比べて厳しい制限を得ることができ、99.99%の信頼区間でずれは1.15%未満であるという結果を得た。 第二に、スカラーテンソル理論がバリオン音響振動(BAO)に与える影響を考慮し、6dF Galaxy Survey、Baryon Oscillation Spectroscopic Survey (LOWZ and CMASS)及びSloan Digital Sky SurveyによるBAOの最新の観測結果とPlanck衛星によるCMBの観測結果とを合わせて用いてパラメータ推定を行った。新たな制限結果として、BAOの観測結果を加えることで、重力定数のずれへの制限結果は10%以上向上することがわかった。 これらの結果は、Planck衛星による非常に高精度な温度ゆらぎの観測結果に加えて、Eモード偏光、温度揺らぎとEモード偏光の相互相関、及びレンジングポテンシャルのパワースペクトル等の観測データの寄与によって得られたと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績欄における第一の研究内容については、論文にまとめPhysical Review Dへ投稿し、査読を通過してすでに出版されている。第二の研究内容についても論文にまとめ、Progress of Theoretical and Experimental Physicsへ投稿し、査読を通過してすでに出版されている。 当初の研究計画において当該年度に遂行予定の研究内容がこの第二の研究に該当している。また、これらの研究結果については、国内外の学会で発表をしており、多くの研究者との交流や議論も積極的に行うことができた。 以上のことから、本研究は当初の予定通り順調に進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで本研究を推進するにあたり、数値計算の能力及びパラメータ推定を行う統計的手法を着実に身につけることができた。従って、今後も標準的な宇宙論モデルを拡張した理論に着目し、宇宙論的な観測結果を用いて拡張理論への制限を行っていきたいと考えている。
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Research Products
(6 results)