2016 Fiscal Year Annual Research Report
診断・治療を融合するTheranostics用多機能低分子キレート医薬品の開発
Project/Area Number |
16J05493
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
飯國 慎平 京都大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | Theranostics / 固形腫瘍における低酸素領域 / 炭酸脱水酵素-IX |
Outline of Annual Research Achievements |
Theranosticsとは画像診断(Diagnostics)と治療(Therapeutics)、それぞれのモダリティを融合したものと定義される。Theranosticsでは画像診断を担う要素と治療を担う要素を同一薬剤が含有し、同じタイミング、同じ濃度で標的組織に送達させることが可能となる。したがって、画像診断と治療を同時に行うことを可能とする、Theranostics用薬剤の開発は、患者個々の病気の性質を的確にとらえ、効果的な治療を的確に進めていくことによって、患者に大きな利益を寄与することができる個別化医療(テーラーメイド医療)に繋がると考えられる。 炭酸脱水酵素-IX (CA-IX) は、固形腫瘍の低酸素領域において特異的に発現することが知られており、現在までにCA-IXを標的とした診断または治療薬の開発研究が活発に行われてきた。そこで本研究ではCA-IXを標的としたTheranostics用製剤の開発を目的として、CA-IXリガンドであるスルホンアミド誘導体を2分子導入した111In錯体 ([111In]US2) の設計・合成を行い、まずCA-IXイメージングプローブとしての有用性評価を行った。 [111In]US2について、CA-IXに対するin vitroおよびin vivo親和性を評価したところ、in vitroおよびin vivoにおけるCA-IX特異的親和性を示した。さらに[111In]US2を担がんマウスに投与したところ、SPECTによりCA-IX高発現腫瘍を明瞭に、選択的に描出した。以上の結果は、[111In]US2のCA-IXイメージングプローブとしての有用性を示すとともに、[90Y]US2のがん治療薬剤としての可能性を示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
固形腫瘍における低酸素領域を標的としたTheranostics用薬剤の開発を目的として、炭酸脱水酵素-IX結合放射性金属キレートを作製し、担がんマウスにおける腫瘍の画像診断に成功し、計画書通りに進捗しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに、炭酸脱水酵素-IX (CA-IX) を標的とした2価111In錯体である[111In]US2を用いて、モデルマウスにおけるCA-IX高発現腫瘍のSPECTイメージングに成功した。今後は、放射性金属を111Inから90Yに置換した[90Y]US2を作製する。90Yはベータ線放出核種であることから、がん細胞障害効果が期待できる。[90Y]US2のがん治療薬剤としての有用性評価を行う。 さらに、1年目の実験を継続しながら、より有用な性質を有する、がんを標的としたTheranostics用薬剤の設計・合成およびスクリーニングを行う。良好な結果を得られた錯体において、金属を変更した錯体を作製し、同様な評価を行う。治療ならびに画像診断それぞれにおいて、錯体が様々なモダリティに対応する可能性を検討する。 PET/SPECTならびにMRIそれぞれのモダリティについて、その画像診断が可能であり、また治療ユニットによる十分な治療効果を得られ、かつ副作用の発現を考慮した、生体に対して安全なキレート薬剤の投与量を検討する。
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