2016 Fiscal Year Annual Research Report
金属内水素拡散メカニズムに関する量子・分子・統計論的解析
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16J05572
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
井川 祥平 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | 分子シミュレーション / 量子効果 / ポテンシャル障壁 / 水素 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度には,量子効果が金属内における水素拡散にとって重要な因子であるポテンシャル障壁に与える影響を分子シミュレーションにより解析を行った.まず,量子効果を考慮した金属内のポテンシャルエネルギーの分布を評価するために,Path-Integral Molecular Dynamics法による計算を実施した.また,Path-Integral Molecular Dynamics法による計算で得たポテンシャルエネルギー分布を元にNudged Elastic Band法による計算を行いポテンシャル障壁の評価に必要なMinimum Energy Pathを評価した. 結果として,ポテンシャルエネルギー分布は低温領域において,古典のものに比べ大きく変化した.また,それにともないMinimum Energy Pathもまた量子効果によって大きく変化することが明らかになった.ポテンシャル障壁については,高温領域では古典の場合より高く,低温領域では古典の場合より低い値になった.これらの変化は量子効果による水素原子の存在領域が,高温の場合には高いエネルギー領域にも存在し,低温の場合には低いエネルギーの場所にのみ存在するように広がりを持ったためである. これらの研究は,現在着目されている水素エネルギーの発展に必要不可欠な研究である.特に本研究で明らかになったMinimum Energy Pathが量子効果によって受ける影響は過去の研究により言及されておらず,Minimum Energy Pathは水素の拡散経路に相当するものなので,本研究の結果は工学的に非常に意義のあるものだと考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現段階においては,当初に構想していた量子効果によるポテンシャル障壁の温度依存性の定性的な評価までは行うことができた.しかし,本研究では金属間の相互作用を考慮しておらず,金属構造の最適化の作業をまだ行っていないため,定量的な評価ができていないのが現状である.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究としては,まず金属間の相互作用を考慮することにより金属の構造最適化を行った上で,量子効果によるポテンシャル障壁の温度依存性を定量的に評価することである.また,その後は,原子位置の不確定性の他に金属内の水素拡散に影響を与えると考えられる量子トンネル効果を考慮した解析を量子波束法によって行うことである.
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