2018 Fiscal Year Annual Research Report
肥満、NAFLD/NASHにおけるSemaphorin3Gの役割に関する検討
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16J05611
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
林 愛子 千葉大学, 大学院医学薬学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 肥満 / 脂肪肝 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度までの研究において、コリン欠乏高脂肪飼料 メチオニン減量食(CDAHFD食負荷)を行い、Sema3GKOマウスでは体重減少が認められたのに対し、野生型では体重増加が認められた。また、Sema3GKOマウスでは肝機能障害が軽減されている可能性が示唆された。 次に8週齢のマウスに対して8週間の高脂肪食負荷を行なったところ、やはりSema3GKOマウスは野生型に比較して有意に体重増加が小さいことが示された。ブドウ糖負荷での血糖上昇はSema3GKOにて有意に小さく、インスリン低血糖試験(ITT)ではSema3GKOにてインスリン抵抗性が有意に小さく、野生型に比較して耐糖能が良好であることが示された。その後も高脂肪食負荷を数回繰り返し、体重や糖代謝の点に関して、上記の再現性を確認した。次に、運動量を評価するべく、行動試験を行った。運動量測定装置(ACTIMO)を使用し、11日間に渡って、行動量を計測した所、Sema3GKOマウスでは有意に行動量が増加していた。Y字迷路を用いた検討では、Sema3GKOマウスにおいて総アーム進入回数が有意に増加していた。また、不安関連行動評価法として用いられる高架式十字迷路では、オープンアームに対する進入回数および滞在時間がSema3GKOマウスにおいて有意に増加していた。近年、内皮細胞由来Sema3Gが海馬における神経シナプス構築や可塑性に役割を果たすことが報告された(Neuron 2019)。我々の結果もSema3Gの中枢における役割を示唆しており、このような中枢性作用が末梢における肝障害軽減、体重減少に関与している可能性もある。今後引き続き検討を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
肥満、脂肪肝、脂肪肝炎におけるSemaphoin 3G (Sema3G)の役割を明らかにすることを目的として研究を進めた。Sema3Gノックアウト(KO)マウスと野生型マウスに、コリン欠乏高脂肪飼料 メチオニン減量食負荷や高脂肪食負荷を行った所、Sema3GKOは野生型に比較して、体重増加が少なく、ブドウ糖負荷試験とインスリン抵抗性試験の結果から、耐糖能が良好であることが再現性をもって示された。次に、脂肪組織や褐色脂肪組織に着目して、炎症や脂肪分化に関する検討を開始した。脂肪組織におけるマクロファージの浸潤をIba-1染色にて定量評価を行なったところ、Sema3GKO脂肪組織ではIba-1陽性細胞が少なく、炎症が軽減されている可能性がある。 続いて、脂肪分化に伴うSema3Gの発現様式をin vitroで検討した所、マウス繊維芽細胞3T3L1細胞やヒトやマウスの脂肪組織から得た間質血管分画の脂肪分化に伴ってSema3Gの発現が認められることを確認した。今後も炎症と脂肪分化の観点からSema3Gの機能解析を進める。さらに興味深いことに、Sema3GKOマウスを用いて行動試験を行った所、野生型に比して行動様式が異なることが明らかとなった。エネルギー代謝の中枢神経支配は現在着目されている分野であり、このような幅広い視点から研究が進められていることは評価に値する。
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Strategy for Future Research Activity |
in vitroの実験では、HepG2細胞に対して、TGF-β刺激を行い、Sema3Gリコンビナント添加の有無によりSmadのリン酸化の程度に差が生じるかを検討した。ウェスタンブロットにて、リン酸化Smad2とSmad2/3を定量評価し、Sema3G添加群にてリン酸化smad2の発現が多い傾向は認めたが、再現性が得られず、実験を繰り返す予定である。 また、ヒトの脂肪組織から間質血管分画(SVF)を採取し、脂肪細胞への分化実験を行った。3T3L1細胞と同様に、分化に伴ってPPARγの上昇が認められ、Sema3Gの発現が確認できた。また、Sema3GKOマウス、野生型マウスの精巣周囲脂肪組織を採取し、そこから得たSVFを培養し、脂肪分化実験を行った。これまで同様、脂肪分化に伴って、Sema3Gの発現を確認した(野生型マウス)。脂肪分化の程度について、PPARγはSema3GKOマウスの方が野生型に比して高値であり、組織学的にSema3GKOマウスにおいて脂肪細胞が小型化し、総数が多いことと矛盾しない結果と考えた。また、Sema3GKOマウスのSVFに対して、TGF-β刺激を行い、Sema3Gリコンビナント添加の有無によりsmadのリン酸化の程度に差が生じるかを検討した。ウェスタンブロットにて、psmad2とsmad2/3を定量評価したが、明らかな差が認められず、再検討を行う。
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Research Products
(3 results)