2016 Fiscal Year Annual Research Report
反対称化分子動力学で探る陽子過剰核での陽子中性子相関の発現機構
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16J05659
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
森田 皓之 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 反対称化分子動力学 / Gamow-Teller遷移 / 陽子中性子相関 / 陽子過剰核 / 奇奇核 / アイソスピン / クラスター構造 / 対相関 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度はN=Z=odd核における陽子中性子間(pn)相関を取り扱う際の新手法の開発(下記1)と同手法の軽い原子核への適用(下記2)を行った. その結果, 本研究課題の基礎となる手法とその有効性が確立された. (1)アイソスピン射影とβγ拘束を同時に課した反対称化分子動力学(AMD)法を開発し, 10Bに適用することでN=Z=odd核におけるpn相関を取り扱う上での有用性を確かめた. この手法はアイソスピンT=0,1状態それぞれに対して四重極変形度を定義し, それを良い生成座標として用いることで, pn対のコア核に対する空間的な発達を記述できるようにした手法である. この手法をTβγ-AMD+GCM法と名付け, 内容をまとめた論文がPTEPに掲載された. Tβγ-AMD+GCM法はpn対の形成と運動を取り扱える手法でありながらpn対の形成を仮定しない自己無撞着な枠組みであり, あらゆる質量領域で適用可能な方法になると期待できる. また, 本手法の計算コードは並列計算に最適化されており, 十分な資源が与えられれば質量数の依存性はほとんど問題にならない. (2)p殻核において系統的なGamow-Teller(GT)遷移確率の計算を行った. その結果, 全てのp殻核のGT遷移において, 中性子過剰な親核(6He, 10Be, 14C)の基底0+1状態から娘核(6Li, 10B, 14N)の1つの1+0状態に対して強度が集中するという計算結果が得られた. この結果は, 親核と娘核のそれぞれに対して中性子(nn)対とpn対が形成されており, それらの間でスピンとアイソスピンが同時にflipするという描像がよく成り立っていることを示している. この現象は必ずしもp殻に限定されたものでないと考えられるため, より重い原子核においてもpn対の形成を議論する上で有用であると期待される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画では, スピン・アイソスピン拘束が行えるようにAMDを拡張し, 高速回転に伴うpn相関の発現とspin-flip M1遷移によるpn対の検出可能性を明らかにする予定であった. これらの課題については、おおむね順調に進展している. 前者については計画通りに研究を進めた. 特に, 手法の開発だけなく10Bへの適用によって有効性を示せた点については当初の計画以上に進展したといえる. また, この内容について複数の学会, 国際会議等で発表しただけでなく原著論文としてまとめられたことは大きな成果である. 一方, 後者については一部計画を変更し, 研究を進めた. 当初考えていたspin-flip M1遷移はg因子や軌道成分の遷移による影響を受けるため, pn相関との関係を議論することが容易ではない. そこで, これらの影響の無いGT遷移とpn相関の関連について詳しく研究した. この内容はより重い原子核でも同様の議論ができる可能性があり, 次年度でのさらなる展開が期待される. この内容についても複数の学会, 国際会議等で発表し, 現在論文として投稿中である.
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Strategy for Future Research Activity |
今後はこれまでに得られた成果をsd殻領域に拡張したい. まず, 22Naの低励起状態についてTβγ-AMD+GCM法を用いた計算を進める予定である. すでに得られた結果では, 22Ne基底0+1状態からのGT遷移は10Bのときと異なり, 2つの1+0状態に強度が分裂する. この現象がsd殻領域で起こる普遍的なものかどうかという観点は, 変形とpn対相関の関係を議論するに当たって有用であると考えており現在解析中である. その後は, 計画通り超許容β遷移確率の上昇によるpn相関の検出についてアイソスピン混合を取り入れた精密計算を行いたい. これについては, 当年度の成果(2)が参考になると予想される.
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Research Products
(9 results)