2016 Fiscal Year Annual Research Report
可視光・X線・ガンマ線観測による活動銀河核の長期活動現象の解明
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16J05742
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
橘 優太朗 東京工業大学, 理学院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 活動銀河核 / ブラックホール連星 / ジェット / MAXI / MITSuME望遠鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
ブレーザー天体は相対論的ジェットを伴う活動銀河の中でも、そのジェットを正面から観測している天体である。しかし、その放射の元となる電子の加速機構や構造は依然として議論の下にあり、特に、数週間から数年に及ぶ超長期変動の起源に対する解釈は未だ殆どなされていないと言っても過言ではない。 このような状況を踏まえ、本年度は可視光の系統的解析のための解析環境の構築と、変動性の違いから放射機構を推定するための解析手法の確立を行った。 可視光データ解析環境に関しては、大学間連携事業の一環で開発されたFITsデータ解析パイプラインCARP (Saito, Morokuma, Tachibana et al., in prep)を主軸として、MITSuMEデータの解析に特化した環境を実装した。 活動銀河核の変動起源の研究については、今年度はMAXIのX線長期観測データを解析することによって、ジェットを持つ活動銀河核である Centaurus A のX線の長期変動(~数週間)にエネルギー依存する変動の遅延が存在する事を発見した。これは、議論中であった当該天体のX線放射起源の議論に一石を投じる結果であり、放射領域の電子のエネルギーが従来考えてられているよりも低い事が示唆された。本論文はPASJ誌から出版された(Tachibana et al., 2016)。 加えて、活動銀河核をスケールダウンした天体とも言える、ブラックホール連星V404 CygniのMITSuMEによる可視光観測結果を上記環境を用いて解析することで、本天体の可視光変動が三成分の重ね合わせであることを明らかにした(Tachibana et al., accepted)。これらの異なるそれぞれの変動の起源に対する合理的な解釈を加え、今まで謎に包まれていた本天体のアウトバースト中における描像を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、MTSuME望遠鏡で今までに観測されてきた約60のブレーザー天体に対する網羅的な解析を本年度までに終えている予定であったが、未だ数天体にしか完了していない。しかし、解析手法の確立と検証は概ね終了していることに加え、本年度構築した解析環境が正しく動作することも確認済みであるため、網羅的解析と、それに続く多波長観測データを用いた解析はすぐに始められる状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
MITSuME アーカイブデータの網羅的な解析の推進と並行し、長期変動の解釈と突発的現象の解釈は相補的な関係にあるとの認識の下、世界最大規模の可視光観測プロジェクトの一つであるCaltechのZTFプロジェクトの立ち上げに現地で参加し、活動銀河核の変動の系統的な解析のための知見を得る。これにより、可視光観測データとして、MITuME望遠鏡による特定天体の集中的な観測データのみならず、iPTF、ZTF で得られるサーベイ的観測データからも活動銀河核の光度変動の情報を適切に抽出することができると考える。これにより、さらに詳細かつ系統的な解析を行うことが可能であり、科学的、統計的に尤もらしい結果を得られると考えている。
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Research Products
(10 results)