2017 Fiscal Year Annual Research Report
歯の放射能測定による福島第一事故被災動物の内部被ばく線量の評価
Project/Area Number |
16J05758
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小荒井 一真 東北大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
|
Keywords | 歯 / Sr-90 / Cs-137 / 福島第一原発事故 / 被ばく線量推定 / 環境動態 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、福島県内旧警戒区域内におけるウシ採取地点付近で採取された土壌、とその抽出液の測定を行い、歯へのSr-90の移行機構を明らかにすることを試みた。土壌からの抽出は、超純水ならびに1 M酢酸アンモニウム水溶液で行った。本報告書では、抽出液を可給態と呼称する。 Sr-90比放射能を比較したところ、土壌 < 可給態 ≒ 歯 という関係性が得られた。Sr-90は事故によって環境へと沈着したが、安定Srは元々環境中に存在した。そのため、土壌中のSr-90は安定Srよりも溶出しやすい状態であった。また、可給態と歯の比放射能は、同程度であった。そのため、歯中のSr-90は可給態を経由したものであったことを示唆している。したがって、ウシの歯中Sr-90は可給態の汚染を反映していることが明らかになった。 また、サルの全身試料中のSr-90ならびにCs-137を定量した。Sr-90は歯と全身骨を対象とし、Cs-137は歯と骨に加え大腿筋も対象とした。測定対象としたサルは、福島県浪江町内で採取されたサルを使用した。 Sr-90濃度は、歯、骨共に幼獣の方が成獣よりも高かった。幼獣の歯、骨は、共に汚染された環境下で形成・成長したためにSr-90の取り込み量が多くなったと考えられる。したがって、骨髄線量推定の際には、骨へのSr-90取り込み量の変化を考慮する必要性が示された。 また、歯や骨のCs-137濃度はSr-90濃度と同等から10倍程度の範囲にあることが明らかになった。大腿筋は歯や骨の10倍程度のCs-137濃度であった。そのため、骨髄線量を推定する場合は、Sr-90だけでなく、Cs-137からの被ばく線量も評価する必要があることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
課題2年目の目標である、「環境中から歯へのSr-90の移行機構」と「サル全身でのSr-90とCs-137の定量」を達成したため、研究課題が順調に進展したと判断した。 今年度は、福島県内旧警戒区域内におけるウシ採取地点付近で採取された土壌、とその抽出液の測定を行い、歯へのSr-90の移行機構を明らかにすることを試みた。その結果、環境中のSr-90比放射能は土壌 < 可給態 ≒ 歯 という大小関係性であることが明らかになった。Sr-90は事故によって環境へと沈着したが、安定Srは元々環境中に存在した。そのため、土壌中のSr-90は安定Srよりも溶出しやすい状態であった。また、比放射能の関係から、歯中のSr-90は可給態を経由したものであったことを示唆している。したがって、ウシの歯中Sr-90は可給態の汚染を反映していることが明らかになった。 また、サルの全身試料中のSr-90ならびにCs-137を定量した。Sr-90は歯と全身骨を対象とし、Cs-137は歯と骨に加え大腿筋も対象とした。測定対象としたサルは、福島県浪江町内で採取されたサルを使用した。 Sr-90濃度は、歯、骨共に幼獣の方が成獣よりも高かった。幼獣の歯、骨は、共に汚染された環境下で形成・成長したためにSr-90の取り込み量が多くなったと考えられる。したがって、骨髄線量推定の際には、骨へのSr-90取り込み量の変化を考慮する必要性が示された。 また、歯や骨のCs-137濃度はSr-90濃度と同等から10倍程度の範囲にあることが明らかになった。大腿筋は歯や骨の10倍程度のCs-137濃度であった。そのため、骨髄線量を推定する場合は、Sr-90だけでなく、Cs-137からの被ばく線量も評価する必要があることが示唆された。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の目的は、歯の放射能測定による動物体内のSr-90およびCs-137の総量の推定、ならびに内部被ばく線量の推定である。 最終年度は、環境中でのSr-90、Cs-137の化学形態の経時変化を明らかにする。これまでの測定結果から、土壌から移行しやすいSr-90とCs-137の量は時間経過に伴い変化していることが示唆された。そのため、異なる時期に採取された土壌からSr-90とCs-137を抽出し、抽出割合と比放射能の変化から環境中でのSr-90とCs-137の移行しやすさの経時変化を明らかにする。 また、歯と全身のSr-90とCs-137の総量の関係性を明らかにする。2年目に測定した浪江町で採取されたサルに加え、南相馬で採取されたサルの全身試料も測定する。また、これまで測定した大腿筋以外の全身試料のCs-137測定を行う。これらの測定結果から歯中のSr-90、Cs-137の濃度と総量の関係を明らかにする。最終的に、体内のSr-90、Cs-137の総量から内部被ばく線量の推定を行う。
|
Research Products
(12 results)
-
-
[Journal Article] Estimation of environmental pollution after the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant accident by measurement of radioactivities in teeth2017
Author(s)
K. Koarai, Y. Kino, J. Nishiyama, A. Takahashi, T. Suzuki, Y. Shimizu, M. Chiba, K. Osaka, K. Sasaki, T. Fukuda, E. Isogai, T. Oka, T. Sekine, M. Fukumoto, H. Shinoda
-
Journal Title
Proceedings of the 18th Workshop on Environmental Radioactivity
Volume: 1
Pages: 202-207
Peer Reviewed / Open Access
-
[Journal Article] Correlation of Sr-90 activity concentration between the tooth and bone of cattle suffered from Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant accident2017
Author(s)
J. Nishiyama, K. Koarai, Y. Kino, Y. Shimizu, A. Takahashi, T. Suzuki, M. Chiba, K. Osaka, K. Sasaki, T. Fukuda, E. Isogai, T. Oka, T. Sekine, M. Fukumoto, H. Shinoda
-
Journal Title
Proceedings of the 18th Workshop on Environmental Radioactivity
Volume: 1
Pages: 196-201
Peer Reviewed / Open Access
-
-
[Presentation] Assessment of 90Sr pollution from the Fukushima-Daiichi Nuclear Power Plant accident by measurement of cattle teeth2017
Author(s)
Kazuma Koarai, Yasushi Kino, Atsushi Takahashi, Toshihiko Suzuki, Yoshinaka Shimizu, Mirei Chiba, Ken Osaka, Keiichi Sasaki, Yusuke Urushihara, Tomokazu Fukuda, Emiko Isogai, Hideaki Yamashiro, Toshitaka Oka, Tsutomu Sekine, Manabu Fukumoto, Hisashi Shinoda
Organizer
4th International Conference on Environmental Radioactivity (ENVIRA2017)
Int'l Joint Research
-
[Presentation] Can radionuclides in the teeth be used for the assessment of environmental pollution?2017
Author(s)
Kazuma Koarai, Yasushi Kino, Atsushi Takahashi, Toshihiko Suzuki, Yoshinaka Shimizu, Mirei Chiba, Ken Osaka, Keiichi Sasaki, Yusuke Urushihara, Tomokazu Fukuda, Emiko Isogai, Hideaki Yamashiro, Toshitaka Oka, Tsutomu Sekine, Manabu Fukumoto, Hisashi Shinoda
Organizer
Tohoku University's Chemistry Summer School 2017
Int'l Joint Research
-
-
-
-
-
-