2017 Fiscal Year Annual Research Report
ジョルジョ・デ・キリコによる形而上絵画理論のシュルレアリスムへの影響に関する研究
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16J05817
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Research Institution | Seijo University |
Principal Investigator |
長尾 天 成城大学, 文芸学部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | デ・キリコ / シュルレアリスム / 子どもの脳 / 神の死 / ニーチェ / ショーペンハウアー / 生の無意味 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度の主な実績は、学術論文として、①「神の死の肖像 ―― ジョルジョ・デ・キリコ《子どもの脳》について」(『WASEDA RILAS JOURNAL』no.5、早稲田大学総合人文科学研究センター、2017年10月、205-220頁)、②「西洋近代美術における『神の死』とシュルレアリスム試論」(『成城文藝』242号、成城大学文芸学部、2017年12月、1-17頁)。③「予言装置としての絵画 ―― シュルレアリスムにおけるジョルジョ・デ・キリコ受容の一側面」(『エクフラシス』第8号、早稲田大学ヨーロッパ中世・ルネサンス研究所、2018年3月、65-81頁)。④“Giorgio de Chirico and the Nonsense of Life: Nietzsche, Schopenhauer, Metaphysical Painting,”(Aesthetics, no.21, the Japanese Society for Aesthetics, February 2018, pp.69-82)。研究発表として、⑤「もしもシュルレアリスムが美術だとしたら?」(早稲田大学総合人文科学研究センター研究部門「イメージ文化史」主催、シュルレアリスム美術を考える会企画、シンポジウム「もしもシュルレアリスムが美術だとしたら?」、2017年12月16日、於早稲田大学)。⑥「没落する人間 ―― ジョルジョ・デ・キリコ《子どもの脳》の派生作品について」(美学会東部会例会、2018年3月3日、於早稲田大学)を挙げることができる。①は前年度に既に発表していた内容を論文化したもの。②(⑤も同内容)は「神の死」という問題からデ・キリコとシュルレアリスムを捉え直すもの。③⑥は、①で扱った《子どもの脳》という作品のシュルレアリスムにおける受容及び派生作品について論じたもの。④は既に前年度に提出していたものだが、ようやく発行された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は、前年度に完成していた内容の論文化あるいは提出していたものの発行を含めて、4本の論文発表と、2回の研究発表を行うことができた。前年度に発表したデ・キリコの作品《子どもの脳》についての研究を出発点として、その派生作品についての考察、シュルレアリスムにおけるこの作品の受容、またこの作品がはらむ「神の死」という思想によって、如何にデ・キリコとシュルレアリスム、また近現代美術史を捉える観点が得られるかを提示できたことは大きな進展だった。当該年度の研究によって、デ・キリコとシュルレアリスムの関係を《子どもの脳》という作品を軸に捉えることができたと言える。このことは次年度に、両者の理論的、思想的連続、および断絶について考察を行うにあたり、大きな足掛かりとなる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、当初の計画通り、デ・キリコの形而上絵画理論とシュルレアリスムの理論的、思想的連続と断絶について総合的な研究を行う。既に文献などのデータも揃っており、現段階における主要な論点も設定できている。つまり、①形而上絵画理論とシュルレアリスムにおける主体の客体化の問題、②形而上絵画理論とシュルレアリスムにおける現実概念とその空間表象の問題、③形而上絵画理論における「記号の孤独」とシュルレアリスムにおける「痙攣的な美」の問題である。もちろん、変更する可能性もあるが、これらを随時、個別の論文としてまとめつつ、必要に応じて海外調査を行う。そして最終的にデ・キリコとシュルレアリスムの関係についての新たな観点を提出したいと考えている。
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