2017 Fiscal Year Annual Research Report
ICCおよびc-Kitに着目した腸管神経修復機構の解明
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16J05888
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
玉田 宏美 名古屋大学, 医学系研究科, 特別研究員(PD) (60712817)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 細胞組織学 / 腸管神経系 / 神経再生 / FIB/SEM |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、腸管神経系を塩化ベンザルコニウム(BAC)処理で損傷した後に新たに出現する異所性神経細胞のオリジンの同定とメカニズムの仮説を立てるべく、本年度は主に免疫組織学的手法を用いた研究を行った。 野生型マウスを用い、BAC処理を施した後、異所性神経細胞が出現し始めるタイムコースに伴い、c-Kit positiveの細胞が漿膜下に出現することを明らかにした。この細胞は、腸管神経節細胞やグリア細胞、マクロファージなどのマーカーには陰性であるものの、発生段階における腸管神経前駆細胞のマーカーに対し、一部陽性反応を示す所見が得られた。結論を出すにはさらに染色方法の改善、他の抗体の検討が必要であると考えているが、本研究結果から、BAC損傷後の前駆細胞におけるc-Kitの発現が、研究代表者がこれまでに明らかにしたc-kitミュータントマウスでの神経再生の亢進に関与しているのではないかと仮説を立てている。引き続き、異所性神経細胞のオリジンの同定(遊走経路など)と、前述の仮説に基づき、c-Kit発現細胞の分化を阻害するファクターなども明らかにしたいと考えている。 本研究に関して、International Society of Autonomic Neuroscience 2017 (ISAN2017)にて発表を行った。 また、異所性新生神経細胞の周辺要素の電子顕微鏡レベルでの観察も、細胞間コンタクトを理解するにあたり有益であると考えられる。特に、広範囲の電顕観察が可能な3D電顕の利用を想定しており、昨年度より、新しく所属機関に導入されたFIB/SEMの稼働に関わっている。その結果を国際研究会で発表した。さらに、c-Kit抗体の発現を蛍光で同定後に3D電顕観察に移行するCorrelative-Light-Electron-Microscopy(CLEM)法の確立を継続中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
免疫組織化学的手法を用い、損傷後に新生される異所性神経細胞のタンパク発現について明らかにすることができ、再生メカニズムを解明するための仮説を立てる手がかりを得ることができた。また、広範囲の微細構造解析を行うための新しい電子顕微鏡技法FIB/SEMの稼働および解析を可能にする環境を整えることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度得られた仮説をもとに、さらにタンパク発現の詳細を整理するとともに、オリジンにとどまらず神経再生へのc-Kit関与を証明すべく、免疫組織化学的手法に加え、単離腸管培養系での検討を計画している。また、CLEM法での解析により微細構造レベルでの解析が可能と考えている。
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